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偏見、差別はなくならない。

2020年5月25日、アフリカ系アメリカ人のGeorge Floydさんが、白人警察官に膝で首を押さえつけられたまま死亡する事件が起きました。この事件を発端に、アフリカ系アメリカ人への差別に対する抗議活動が全米へと拡大、さらには人種差別に対する抗議活動が全世界へと広がり続けています。

ある日の出来事:偏見の根深さと複雑さ

あちらこちらに偏見や差別は溢れています。
なんて、言葉で言うのは簡単なのだけど、日本にいて、どれだけの人が「人種差別」を実感として持ったことがあるでしょうか。特に、これほどまでに世界中で声が上がっている「黒人差別」について。

数年前、「黒人」という言葉でくくられた人々への偏見を見せつけられたことがあります。とても苦い記憶。
これは非常に繊細で、文章になんてしてはいけないのかもしれません。でも、誰にでもある「無意識の偏見」を目の当たりにした瞬間として、私の心に刻まれている一片を書き留めておきたいと初めて思ったのです。


あなたは私たちを差別してるんだよ」

「差別ですか?そんなことしてません」

「じゃあ、あなたは黒人でも結婚できるというのですか?」

「え?どういうことですか?なぜですか?もちろんできます。相手を好きになれば人種なんて関係ありませんよね」

「あなたは嘘つきですね。黒人となんて結婚できる訳がない。嘘だ」

「人種によって結婚するかしないかを判断するなんてありえません」

「信じられない。相手は黒人だぞ

この後和解したものの、とても悲しいやり取りでした。
決めつけられたのも悲しかったけれど、もしかしたら偏見や差別的な態度が私にもあったかもしれません。だとすれば謝罪しかないです。ただ、敵ではないことを理解してもらうために必死だったことは覚えています。
けれど、折に触れて思い出すのです、なぜあの場面で「黒人」という全く関係のない人々を持ち出して、さらに関係のない「結婚できるか、できないか」という判断を迫られたのかを。
「黒人」という言葉で特定の人々をくくり、差別を嫌うはずのその人が差別していて。でもその人自身は、自分の差別的な言動には無意識で。

あぁ、差別って、なんて根深く、複雑なんだろう。。
差別される痛みが分かる人が、必ずしも差別をしないという訳でもない。
「差別なんてしていない」などと、わたしが言い切れるはずもない事を理解していなかった傲慢な自分が恥ずかしい。

消し去れない「無意識の偏見」に向き合う方法

自分の中にある偏見や差別的意識をなくすことはできません。とはいえ、偏見が根付き、差別が生まれると、社会の格差は広がり、争いが絶えることはないでしょう。少しでも消し去る努力をしなければ、安心・安全な社会で暮らすことはできませんよね。
もしも「わたしは偏見も持っていないし、差別もしない」と思っていたら要注意です。偏見は、誰しもが無意識に持つものだからです。その事実を受容することで、自分の偏見や差別的意識に気付ける可能性が出てきます。
逆に、意識しないと、偏見や差別を減らしていくことはできないのではないでしょうか。自分の中の「無意識の偏見」に向き合うことを恐れないで。

向き合うための有効な方法は、大きく2つあると思います。
1つは、なるべく多くの人と交流すること。
世の中に、自分と同じ人間は一人として存在しません。多種多様な人々で社会は成り立っています。偏見とは、「かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断」(デジタル大辞泉より)を指します。人と出会うことで、自分が勝手に抱いた偏った見方に気付かされ、自分の中にある「無意識の偏見」を発見する機会をくれます。
先に挙げたやり取りは、瞬間的には苦しいものでしたが、誰しも無意識に偏見を持つこと、私もまたそうであることを教えてくれました。

もう1つは「歴史を知る」こと。
アメリカの文化人類学者であったルース・ベネディクトが次のように説明しています。

レイシズムの根源を解明するのは科学的追求ではない。求められているのは、どのような条件が揃ったときにレイシズムが生まれ、そして蔓延したかを明らかにする、歴史学の視座である”*¹(ルース・ベネディクト)

歴史を振り返ると、「人種」などの属性によって優劣があるなんてことは、まったく根拠のないことに気付くでしょう。抱いているネガティブなイメージが、特定の人々によってつくられてきた歴史を知れば見方も変わるはずです。その歴史から、人間は「優秀」という言葉に弱いことも気付けるのではないでしょうか。

映画で米国における黒人差別について理解する

2016年にNetflixが配信した「13th ー憲法修正第13条ー」は衝撃的ですが、アフリカ系アメリカ人が差別されてきた歴史を知る参考になると思います。
「現代の米国の社会問題に、アフリカ系アメリカ人の"大量投獄"がある。黒人が犯罪者として逮捕されやすい事実を学者、活動家、政治家が分析するドキュメンタリー」(Netflixより引用)

Youtubeで無料視聴も可能です(日本語字幕あり)。ぜひ。

ドゥ・ザ・ライト・シング」をはじめとした、スパイク・リー監督の作品も見逃せません。


<引用文献>
*¹ 2020, ルース・ベネディクト『レイシズム』阿部大樹訳, 講談社学術文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000341218

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