見出し画像

フリーフロム=引き算の健康志向 次に来る〇〇フリーは? ①

「グルテンフリー」「シュガーフリー」など個々のワードについては日本でも浸透した印象だが、その総称たる「フリーフロム」という用語について、認識している日本人はまだ少ないのでは。

 「グルテンフリー」という言葉はある時期から小麦アレルギーの対象者限定の言葉では無くなった。
 小麦、大麦、ライ麦=グルテンが血糖値の上昇を招くこと、免疫バランスを狂わせ炎症を引き起こすこと、中毒性を有する物質を生成して余分な食欲を誘発し太りやすくなることなどから「グルテンの摂取は不健康」であるという観念が定着してきている。テニスのジョコビッチやモデルのミランダ・カーなどグルテンフリーの実践者が注目された。

 このグルテンフリーのように「〇〇フリー」という食品、製品を選択的に摂取する、使用する考え方を「フリーフロム」という。
「入っていて欲しくないものが入っていない」(消費者側から)「気になるものは入れない」(メーカー側から)というものを積極的に選択していこうという志向性である。グルテンフリーなどはフリーフロムの考え方から派生したワードだが、本家のフリーフロム自体は、それほど日本で浸透していない感がある。この理由については後ほど説明したい。

 フリーフロム市場の近年の拡大は目を見張る。これ、日本にいるとあまりピンとこないのでは。欧州では2016~2017年の間にフリーフロム市場は約40%も拡大したといわれる。
 日本でフリーフロムを最初に言い出したメガマーチャンダイザーは、おそらくイオングループではないか。それまでのPBライン「トップバリュ」から派生した「トップバリュ・グリーンアイ」に「グリーンアイフリーフロム」を打ち出したのが2016年である。

画像1

団塊ジュニアの健康志向

  日本が生んだ文化遺産「和食」は、このフリーフロム市場にきわめて親和性が高いと言われる。まず和食材にはフリーフロムの「敵役」小麦などの呪縛から逃れているものが多い。また天然・自然食材を多く用い添加物を使わずに完結するものが多い点でも「〇〇フリー」に合致しやすい。
 にもかかわらず、日本における浸透度の低さはなぜなのか。

僕は、日本が高度成長期を経て豊かになった、その過程にあるコマーシャリズムが影響していると感じる。
 今の50代前半=団塊ジュニア世代、かくいう僕もまさにその世代なのだが、特にこの世代がフリーフロムに対して意識が低いように見える。そして実際、社会でも企業でも、家族のようなもっと小さいコミュニティでも、現在はこの世代が中心になっていることだろう。何せ数が多いから、声も大きくなり立場上で決裁権を持つケースも多い。
 
 この世代が、テレビコマーシャルや活字媒体の広告などを通して目に入ってきた大メーカーの健康志向は「足し算の健康志向」である。昔はとにかくこれだった。「おなじみの〇〇に▲▲が入ってますます栄養満点」とか「〇〇配合!」など昔の商品の健康アピールは「体に良い何かの成分が加わって、ますます体に良いですよ」というものに終始した。
 考えてみればそれも仕方ない。時代は高度経済成長を経て、大量生産・大量消費が市場を制していた。企業では合理化、コストダウンが至上命題になり、食品添加物・化学調味料など人工物と技術力で「美味しいと感じる中毒性のある味付け」が定番化していたのだから、後戻りはできない。

今の引き算の健康志向

そんなコマーシャリズムを通ってきた団塊ジュニアが中心にいる現代の日本に「〇〇を入れない」「〇〇は使わない」という「引き算の健康志向=フリーフロム」が浸透しにくかったのは確かだろう。

ただ、僕ら団塊ジュニアの2世代下あたりから、この意識がとても高いように思う。今の30代あたりだ。これがティーンにまで下がると、もうはっきりしている。
「僕は〇〇が入っているものは摂らないようにしています」
「〇〇が入っているのが気になります」

この前も僕より上の世代の人と「最近の子はアレルギーが多くて大変だ」という話をしていた。おそらくそういうこともあるのだろう。僕らの子供のころ、食物アレルギーを持つ子供など1クラスに1人いるかいないか。アトピー性皮膚炎に悩まされる子も、まあ今考えればいたのだろうが、ごくわずかだった。今、何らかのアレルギーを持つ子供は3人に一人と言われる。学校給食でも家庭でも苦労されていることだろう。

生まれてからそうした、ある種の制限が隣り合わせにある若い世代にとって「〇〇が入っていない」のコマーシャリズム、アナウンスのほうが訴求しやすいのは自明の理ともいえる。
 日本では今まさに過渡期であろうが、これから先、日本のメーカーは嫌でも欧米並みに「引き算の健康志向」を意識した商品開発を強いられるのではないか。
 そのほうが「ものづくり」と「消費」との関係性が健全であり豊かな時代になると思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?