クラフトコーラをイチからつくってみたPART3

ただの思い付きから始まった「コーラづくり」の、なんと奥の深い世界!
こんなコーラが飲みたかった、ができました
その名も「lagoon cola」。この秋、新潟からデビュー!

国内クラフトコーラ市場

クラフトコーラの国内ムーブメントは、コロナ禍の2020年にじわじわと浸透したといえる。
じわじわと、というのはまだ全世代に社会現象的に広まっているものではなく、また市場そのものもぼんやりとしたものである現状を踏まえてのこと。

僕自身、クラフトコーラの市場が成熟期を迎えたと判断する基準を、勝手に2つ設定している。
①ボトリングした飲みきりの製品を出すメーカーが10社以上生まれる
②原材料にこだわった無添加の商品が基本線になる←クラフトコーラがナチュラル志向者のアイコン商品として認識される

メディアで取り上げられることも多くなったクラフトコーラだが、それでも国内で名前の通った銘柄は、僕の認識では2つだけ。おそらくトップランナーであろうIコーラと、最近名前を見ることが多くなったTコーラ。どちらも本拠地は東京だ。
2銘柄ともに原材料は基本的に天然素材をつかっているようだ。着色料、保存料、香料なども使用している様子はない。ラベルを見た限り、だが。
このうち、Iコーラはボトリングした飲みきりの商品もそろえているが、あくまでも主戦場はシロップの販売にあるようで、Tコーラは現段階(2020・9月)でシロップでの販売にとどまっている。「シロップを炭酸で割って飲んでください」スタイル。
要するに炭酸で割ってあってそのまま飲めるコーラをボトリングしたものはI社しか出していない。I社ではオリジナル自販機もしつらえて、都内に設置しているが、機械にコーラが入荷したとたん、ほぼ「瞬殺」で売り切れるそうだ。一部の注目度はすこぶる高いのがわかる。

なぜクラフトコーラの「完成品」がボトル売りされないのか。
最も大きな理由は小ロットのボトリングを外注先として請けるメーカーが、ごくごく少数しか存在しないためだと思う。
クラフトビール(≠地ビール)の市場が国内にも定着し、あまつさえ地サイダーをはじめとするご当地ノンアルコールドリンクが数多存在する昨今、小ロットのボトリングOEMを請け負うメーカーがあってもよさそうなものだが、これが意外なほどに存在しない。嘘だと思ったらネットなどで探してみると良い。

既に売れている2メーカーがどう思っているかはわからないが、僕自身は「シロップが主戦場のうちは市場は成熟しない」と思っている。
それなりに「高級な」(シロップ売りも含めて1杯あたりの単価はだいたい450~550円程度が標準)クラフトコーラだが、コーラである以上は抜栓してそのままゴクゴク飲める方が受け入れられるのではないか。

シロップ売りの場合、消費者は2つの新しい障壁を越えなければならない。ひとつは原材料にこだわった手作りで、値段も高いコーラという新しい世界。もうひとつは今までの習慣になかった「コーラを自分でつくる」というオペレーションを経なければならない点。
消費者に2つ委ねているうちは、文化として定着するのは難しいのではないか。

新潟麦酒というありがたいメーカー

ということで、クラフトコーラをボトル詰めしてくれるメーカーを探すのだが、僕にはひとつアテがあった。

新潟麦酒というビールのマイクロブルワリー。
新潟でビールやウィスキーの醸造をしているのだが、
はっきり言って「地ビール」という陳腐な響きのくくりにはふさわしくない会社。ビールもウィスキーも海外で高い評価を受け、現地の市場にも食い込んでいる点において、単なるローカルビジネスとは一線を画す。
日本で初めて瓶内二次発酵のビールを販売した技術的にも、国内マイクロブルワリーの先端を行く会社と言って良い。

こんなメーカーに手作りコーラのOEMをお願いするのは、
なかなか敷居が高いのではと思ったのだが他に思い当たるところもなく、直談判する運びになった。こういうところで変に臆しない無神経さを持った自分を、たまに誉めてやろうかとも思う。

だしぬけに持ってこられたクラフトコーラのOEMの話に、宇佐美健社長には実に丁寧なご対応をしていただいた。ありがたい話である。

コーラの瓶詰に関して技術的にクリアしなければならない点はなく、小ロット対応も引き受けていただいたのだが、宇佐美社長から言われたのは「シロップの粘度について」と「一定のPH値をクリアすること」の2点だけは伝えられた。目安の請負い単価、ミニマムロットについても示された。
製品検査についても、メーカーサイドで持ち込んでいただけるという。

とりあえず「クラフトコーラを瓶詰めで製品化する」ところまではいけることになった。

試作第一号とマルシェ出店

10月の頭に試作用のシロップを長野から新潟麦酒に送り、同月半ばには早速プロトタイプの第一号が出来上がってきた。
表のラベルはまだ貼られていない。

モトムラから貴重な1本をもらったが、果たしてどう使うべきか......
僕自身は、どういう味になっているかは試飲会を通して知っている。
ここは自分で飲むより、第三者に飲んでもらって率直な感想を仰ぐべきだろう。

飲んでもらったのは「口に入るものに関しては厳しくも正当な目を持っている(であろう)」新潟市のナチュラルフードマーケット「ナチュレ片山」のスタッフの方々。

反応はかなり良かった(と解釈している)
「人工的な味じゃないのが良い」
「スパイシーで大人っぽい味」
「確かにコーラの味。どうやって作るの?」
など。
もともとクラフトコーラを作っている話は済ませており、そこそこ期待値があがっていたこともあるのだろうか(僕の酔狂にそれほど期待値があればの話だが.....)。

商品名は、もちろん既に決まっていた

その名も「ラグーンコーラ」

ラグーンは新潟の「潟」をEngrishにしたもの。
特に新潟ローカルにこだわりもなかったが、
新潟からデビューするということで、乗っかりすぎない程度の敬意は払ったわけだ。

これと同時進行で、このコーラのデビュー戦も決まった。

新潟市内で開催されたおしゃれ系マルシェへの出店。
製品が間に合っていないので、コーラシロップを持込み炭酸で割ってサーブするスタイルで。

当日は晴天に恵まれ、集客も上々。
コーラの売れ行きも良かったし、なにより飲んだお客様が口々に
「美味しい」
と言ってくれたことが大きな励みになる。
お世辞で言ってくれたのではないのが、飲んだ時の驚きの表情でわかった。

あと、やはり新潟のような地方にあっては
「クラフトコーラ」の存在自体が浸透しておらず、無添加で天然材料のみを使用していることは消費者にとっても新鮮な感覚であるというのもわかった。
大いに可能性を見出したわけである。

次はいよいよ製品完成、そして、
日本海側最大の食品見本市「フードメッセ新潟」への出店。

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