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3Dプリンタのフィラメントを試作するにはいくらかかる?

たまにフィラメントを試作してもらえませんか?というご相談をいただきます。この粉があるので、この樹脂と混ぜてフィラメントを作ってほしい、という案件がほとんどです。フィラメント試作にはいくらかかるかと聞かれるのですが、まず粉体と樹脂を混ぜてフィラメントを作るにはどういう工程が必要かを知っておく必要があります。

粉体と樹脂を混ぜてフィラメントを作るというのを、一つの工程でやるのは基本は無理です。この辺はご存じない方が多いかと思います。顔料などを微量添加してフィラメントを作ることはできますが、それでも添加量は0.5~1%程度が限界です。

なぜかというと、「混ぜる」というのと「押し出す」というのは別の行為だからです。二つは見かけは似ていますが、まったく別物です。混ぜるのは混ぜる、押し出すのは押し出す、という形で工程を分けないと、不具合が出ます。

仮に、粉体を10%とペレット90%を押出機に投入してフィラメントを作るとどうなるかというと、粉がスクリューにまとわりついて樹脂が送り出せない、送り出せても粉体が凝集してダマになる、フィラメント径が安定しない…ということがおきます。仮に樹脂は押し出せても、安定的に3Dプリンタで使えるフィラメントにはならないということです。そのため、あらかじめ粉と樹脂は溶融混練してペレットにしておく必要があります。

粉体を高濃度に混ぜたペレット(マスターバッチ)を準備しておいて、希釈樹脂と混合してフィラメントを作るというのはわりとやりやすいです。練りこんで濃度を上げる方向は難しいですが、希釈の方向であればうまくいくことがあります。

試作費用で見てみると、フィラメント加工より溶融混練造粒の方が圧倒的に高いです。えっ?混ぜてペレットを作るだけでこんなにするの?というくらいの金額になります。これにもびっくりされる方が多いですが、そんなものです。樹脂のカスタマイズを依頼するというのは、それくらい金額がかかります。

注意点として、粉体を樹脂と混ぜても、相性によってはうまく混ざらないことが多いです。粉体に下処理をして樹脂となじむようにして混練を行わないと、粉体と樹脂の密着がとれず、見た目混ざっていても顕微鏡レベルで見るとスカスカで脆いフィラメントになってしまうことがあります。本来は事前にラボで実験をし、処方を確立してから依頼するのが望ましいです。

樹脂のカスタマイズを含めてフィラメント加工を依頼する場合には、依頼側もそれなりの技術的なところがわかった上でないと、なかなか話がスムーズにできません。話ができなくても混ぜたいものを伝えれば、加工屋さんは試作はしてくれます。でもできあがったモノの特性がボロボロでも、それは依頼側が受け入れるしかありません。加工屋さんは言われた内容の試作はできますが、結果まで責任を持てないということはあらかじめ理解しておく必要があります。

それを踏まえたうえで、業者さんにフィラメントを試作するにはいくらかかるかを見てみましょう。

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