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酢酸セルロースフィラメント C38TS プリント条件についての考え方

開発中の酢酸セルロースフィラメント C38TSについて、3Dプリント条件の考え方を記載します。推奨条件だけでは条件設定の方向性がわからない場合の補足として読んでください。このページは随時変更、追記していきます。

このフィラメントで難しいのは乾燥と積層強度です。

フィラメント乾燥
一番大事です。セルロース系のため吸水率は高めです。イメージとしてはナイロンやPVAに近いと考えてください。フィラーでできるだけ吸水率は下げてありますが、それでも影響は大きいです。乾燥が不十分だと条件を追い込んでも意味がないため、乾燥は確実に行っておいてください。使用直前まで出荷で使っているアルミ袋の封は切らないことをお勧めします。保管は乾燥剤入りのケースにて密封し、ポリ袋に入れての保管は避けてください。12時間程度大気にさらすと造形外観に異常が出はじめます。マメに乾燥してください。ファーストレイヤーでプチプチ音がしている場合は吸湿が進んでいるサインです。フィラメント乾燥は70℃ x 5時間以上が目安です。低め温度の場合は時間を長くとってください。PLAやABSなどと違い、乾燥と吸湿対策は十分すぎるくらいでちょうどいいと考えてください。温度が適正なら乾燥しすぎてフィラメントが劣化することはありません。

プリンタ
吐出圧力が高めでノズル内圧が高くなる傾向があります。流動抵抗に負けない確実な吐出を実現するためにプリンタはダイレクト式を推奨します。ボーデン式の場合はチューブが短めの小型機を使用ください。ボーデン式の場合は積層ピッチを十分に小さくして吐出の抵抗を下げてください。

ノズル温度
積層強度を取るため温度は高めが好ましいです。フィラーでダレ止めが効くので、温度を高くしてもダレはあまりおきません。樹脂の流動性を考えて240℃までを推奨条件としていますが、積層強度が取れない場合は250℃まで
上げても問題はありません。温度を上げると可塑剤の揮発が大きくなることと、取り込まれている水分の影響で外観が悪くなる傾向があります。外観をみながら温度を調整してください。250℃以上にすると可塑剤の揮発が激しくなり、詰まりを起こす可能性があります。温度は250℃以上には設定しないでください。

ベッド温度
フィラーの効果で収縮が抑えられているので、ベッドは常温でも反りはほとんどありません。ただし、ベッド温度が低いと積層強度が低くなって脆い造形になってしまうことがあります。ベッド温度を上げると造形品が加熱され、樹脂の濡れ広がりをアシストすることができるため積層強度を上げることができます。ベッドは60℃程度でも効果がありますが、強度が取れない場合は100℃程度まで上げてください。背の高い造形の場合はベッドの熱が届かなくなるため、最悪の場合は強度が取れずに造形品が脱落し、モジャモジャが発生します。この場合はドラフトシールドを使用してください。ドラフトシールドを使うとベッドの熱を上まで導くことができ、造形品全体を加熱する補助的な効果を得ることができます。

送風ファン
必ずOFFにすること。送風すると積層強度はとれません。

積層ピッチ
小さめ推奨(ノズル径/積層ピッチ=2.5以上)。積層ピッチを大きくすると積層強度がとりにくくなるほか、吸湿していた際には水蒸気が膨張しやすくなるため外観が悪化する傾向があります。

リトラクション
小さめ推奨(1mm以内)。糸引きは出やすいですが、造形後に簡単に取れるのでリトラクションで糸引きを追い込もうと考えない方がいいかと思います。一般のフィラメントと異なり、加熱で可塑剤が飛んでいく関係でバレル内ガスの影響は大きくなります。リトラクションを大きくするとバレル内に空間ができるためガスたまりが発生し、吐出追従性が悪化します。


積層に亀裂のようなものが出た場合は、フィラメント吸湿か、樹脂の濡れ広がりが悪いことを疑ってください。吸湿は単純に乾燥と防湿を見直し、濡れ広がりはベッド温度、ノズル温度、積層ピッチ、送風ファン、ドラフトシールドなどの条件を見直してみてください。

このフィラメントの造形面で重要なのは、とにかく造形品を冷やさないことです。できるだけ造形品に熱をため込むことを考えて条件設定してみてください。フィラメントの確実な乾燥は前提となります。乾燥状態を維持する環境を整えてください。

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