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声帯を鍛える?声帯の筋トレ?輪状甲状筋を鍛える? って、
ちゃんと意味がわかって言ってるのだろうか…

声帯のを鍛える?声帯の筋トレ?輪状甲状筋を鍛える?

最近SNSなどでたまに目にするこれらの言葉。
これってちゃんと意味がわかってるのかな?


いかにももっともらしい、秘密の練習法があるかのように聞こえますよ。
ですが、かなりまずい言い方だなと思ってます。

これらの言葉で実際に何をさせるのか、それでどんな効果をねらっているのかの真意はさておき、これらの言葉から受ける印象はかなり不味い事になります。

下記の2点がわかると何が不味いのか、その意味もわかります。



1声帯の機能は声を出すだけではなく、呼吸にまつわる色々な重要な機能も持っています。
発声以外の動きの方が、強い力や激しい動きを伴います
例えば「重いものを持ち上げるときに息を止める。」「異物をすき込んだときに咳をする。」など。
逆に発声の時はほぼ声帯に力を入れる必要はありません。



2、筋肉組織の基本的な動きの性質は「縮むこと」。
縮む以外に「緩む事」はできても、自ら伸びることはできないんです。伸びたように見えるのは、その筋肉と対をなす拮抗筋(相反する筋肉)が縮む事で、伸ばしてもらっているのでそう見えるだけです。



この2点を考えれば、なぜ声帯を鍛えるとか筋トレという言葉が不味いのかが見えてきます。



詳細解説

声帯筋が強く働くと言う事は、声帯が縮んで気道を硬く閉じる事になります。それは声に対して何を意味しているのか。



声帯の働きは声を出す以外に、呼吸を止めると言う大きな役割があります。その他、肺や気管に異物が入るのを妨げたり吐き出す「」という大きな役割があります。
声帯筋が強く働くと言う事は、息を止めるとか、咳をする瞬間の動きになる訳です。

もちろんいずれも発声の妨げになります。


良い声とは程遠い行為です。
(ここで言う良い声とは、効率良い響きがあり、表現が自由にできる発声の事を指します)



息を止めたり、咳をする部位も、声を出している声帯という全く同じ部位(器官)がやっているわけです。


ですから、力を入れると声帯が固くなって、声帯振動が妨げられ、いわゆる「喉声」と言われる様な喉を酷使する発声になってしまう。

そして咳は、声帯を固めた状態で息を吐き出し声を出すので、声を出すような大きな咳払いは、声帯を傷める原因になります。

綺麗に響く声を出す状態とは真逆です。


綺麗に響く声を出す状態とは

効率の良い綺麗な発声は、声帯を自由の広げられる声帯の柔軟性と、
声帯の位置と角度、それに声帯に張りを持たせる声帯に連なる周囲の連動のバランスです。


要するに発声する時の声帯はかなり受け身でないとならず、意識的に力を入れてはいけない器官なんです。



では力を入れずにどうやって動かすのか。
力を全く入れないわけではなく、意識的には入れないという事です。不随意に声が出る、とか声帯は半不随意筋である、という言い方をすることがありますが、
意識的に力を入れるのではなく、出す声の高さや響きをイメージする事で、自動的に声帯筋は動きます

喉を力で閉じて息を喉に当てるようにして声を出したり、しゃがれ声にしたりと、意図的に声帯に力を入れることもできますが、意識的に力を入れるほど、発声のバランスが悪くなって、声が通らない、響かない、上手く歌えない、喉が枯れる、となってしまいます。



また、声帯筋を普通の筋トレのように鍛えれば、筋肉は太く強くなりますが、繊細な声が出しにくくなり、高音域も出せなくなります。


という訳で「声帯の動きはイメージ脳に任せてしまえばよい」訳です。


そもそも、声の高さを変えたり、明るい声で話したりする時に声帯の筋肉を意識しないとできない人はいないという事を考えればわかります。
喉の動きを意識する人ほど上手く話せなくなります。

ではどうやてるのか?


イメージした脳が自動的に動かしてくれます。
それを信じてイメージしっかりと持って、どう動くかは力を抜いた声帯(喉)に任せるのです。

じゃ、ボイトレって何をすればいいの?

じゃ、練習って何をすること?
ボイトレって何をすること?



イメージが効率よく声帯に伝わって、声帯が自由に動けるように楽器としての精度が保たれるようにする訓練です。
「発する音のイメージするイメージ力と、イメージがよく伝わる喉や体を作る事」の大きく分けて2つの要素が必要なトレーニングになります。

要するに、音程や響きの
イメージがついてきていない人は、肉体訓練だけしても、全くうまく歌ったり演じたりできません
(イメージが乏しくても声はよくなるかもしれませんね。)
逆に、絶対音感があっても、声帯を含めた喉や呼吸の動きが自由にならない人や、力を入れるクセのある人は、上手く歌えないどころか、音程もよくはなりません。

特に歌はイメージと肉体の連動が演奏そのものであり、イメージとの連動によって、単純作業では成し得ない、芸術的な動きと精度が生まれます。

逆にいうと、理屈がわからなくても、健康体でイメージを上手く使えている人は、話し方も歌もうまい可能性大!
近くにいませんか? レッスン受けたこともないのにやけに歌が上手い素人とか、プロみたいに上手く歌う子供とか。
さらにモノマネも上手いと「あの人耳が良い!」みたいな表現をされることもありますが、肉体が自由でイメージ力があるという事です。

一つ目の要素、イメージが素直に伝わる喉や体を作る事

こちらの方は、ウォーミングアップ、呼吸練習、発声練習などの一般的に馴染みのあるボイトレでなんだと思います。
声帯が自由に動けるように、楽器としての精度が保たれるようにする訓練
そしてそれらの状態を体や喉の感覚で理解すること
しかし、発声練習一つとっても、そういう認識の人は少ないかもしれません。むしろ声を鍛えるという感覚が一般的なのかもしれません。

声帯が自由に動けるように、楽器としての精度が保たれるようにというのは
、まずどのように喉を自由にし、どのように声帯の周囲を使えば声帯を効率よく響かせることができるのか、ということを身体で覚えさせ、習慣付けする(声や歌によく無い習慣を取り除く)、という訓練です。
これは冒頭のタイトルにあるような、

声帯を鍛えるとか、筋トレをするなんていう言い方をすると、真逆の事をするかのように勘違いをさせることになんです。


もし喉を鍛えるという言い方ができるとすると、
咽頭筋の広げや引き上げが主体になりますが、これも鍛えると言うよりは器用に動くようにする訓練するといった方がいいかもしれません。
なぜかと言うと、うまく動けば筋肉の量はあまり関係ないんです。

それと、声の支えという言い方をよく聴きますが(これもよく分かっていないで言っている場合がほとんどですが)
、例えば体幹トレーニングは背骨を真っ直ぐにの保つことができるようになるので、発声器官全体のバランスもかなりとりやすくしてくれ、声の支えを作る訓練です。
また、
横隔膜をしっかり上げる呼吸練習も、鍛えるという感覚があっても良いような訓練で、声の深さや支えを作れます

二つ目のつの要素、音程やフレージングなどのイメージ能力の強化

これも、わかりやすく言うと、音程のイメージ能力の強化が中心で、よくあるレッスンにソルフェージュというものがあります。これは良い訓練で、クラシック歌唱のレッスンには定番ですが、音大の声楽科の生徒は全員やる訓練です。しかし、残念なことに、難しいところまでやる割りには必ずしも音程は良くなっていません
その理由は、上記の「一つ目の要素」が欠けているか、もしくはその連動に気がつけない感じられない人がほとんどで、感じられている人にとっては自然なことなので、意識したことも無い場合が多いでしょう。
なので、講師側も、どうしたらピッチが正確になるのかを生徒に教えることができない場合がほとんどなのです。
そういうこともあり、ソルフェージュは難しい割りに効果がないので、ポップス歌唱の講師はソルフェージュはやらない人がほとんどです。
その代わり、いろいろな課題曲をどんどん歌わせるとか、プロの歌唱をコピーさせるという事をしますが、同じ効果ようなイメージ強化の効果があります。しかし同じように、必ずしも音程は良くなっていません
その理由もソルフェージュと同じで、上記の「一つ目の要素」が欠けているか、もしくはその連動に気がつけない感じられない人がほとんどだからです。

また、人の持っているイメージというのは、実はかなり個人差があり曖昧なものです。
「ちゃんと一音一音をしっかりイメージを持って声を出せているのか」ということについては、やったつもりの人とプロの感覚では大きな差があります。少なくとも上手く歌えない人の多くは、
できてるつもりの人がほとんどだという事は確かです。
そこには歴然としたイメージ力の差が、プロとアマの大きな違いでもあります。


また、もしイメージ能力がすごくあったとしても、喉の力を抜くことができないと、イメージが声帯と連動しないので、やはりイメージがうまく作用しません。絶対音感があるのに歌は上手くない人がいる理由がこれです

これらのイメージと発声の連鎖を上手くやるには、とにかく声帯を柔軟にして、イメージが勝手に声帯の性質をコントロールすることを確信して、邪魔をさせないことがかなり重要な訳です。

長くなりましたが、上達するのに「声帯を鍛える」「声帯の筋トレという説明は、上達するための深い意味でも、かなり危険な勘違いをさせる事になるのです。

でも、フォロー

それと、フォローのようになりますが、
喉を鍛えるとか声帯の筋トレとか言っている先生は、もしかしたら声帯を引き伸ばすための周囲の筋バランスを強化する事を提唱しているのかもしれません。これはとても良い発想だと思いますが、ほとんどの喉頭筋には感覚がない(自覚できない)ので、口で簡単に言えることでは無く、かなりの注意力と力の配分を聴き分ける耳が必要で、簡単に文章にできるようなものではありません。
生理的なの喉やそれにまつわる体の動きを知らずに、解剖学書の喉の図を見てわかった気になっても、出てくる言葉は全く意味を成しませんが、声の違いを聴き分ける良い耳があれば、指導自体はうまくできる人もいます

そして最後に、高音を出すために「輪状甲状筋を鍛える」というような文言についてですが、これも危険というより、支離滅裂、、、

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輪状甲状筋をどうするって?

輪状甲状筋を鍛えるというのは、輪状甲状筋の動きが悪い発声障害がある人や、裏声が出せない人。また、今まであまり歌ったことがなく、高い声もほとんど出した事がないという、超初心者には必要だと思います
しかし、高音を地声で歌いたくて練習方法を探している人や、ミックスヴォイスを覚えたいとちゃんと練習もしている人には、意味がない説明になります。

輪状甲状筋は、確かに高音を出す為に重要な筋肉です。
しかし、裏声でも使う筋肉で、音域を変えるために声帯の性質を変える事をする筋肉で、「地声で高音を歌う」とか「ミックスボイスを覚える」というような場合には、輪状甲状筋を鍛えたから出せるようになるとうものではありません

輪状甲状筋は高い音を連想しただけで勝手に動く全くの不随意筋になります。裏声でも高い音が出せないとか、発声そのものにイレギュラーがある人意外には、筋肉を鍛えるというようなニュアンスの作業は必要ありません。「地声で高音を歌いたい」という事と、輪状甲状筋の動きは残念ながらイコールではないのです。

ファルセット歌唱中心ののソプラノ歌手が、地声の高音やミックスボイスを何年練習しても使えるようにならない場合が多い事からも、それは明らかです。ソプラノ歌手が輪状甲状筋が弱いはずがないからです。
そこからも輪状甲状筋を強くするのと関係ない事は明白
(ちなみに、喉の使い方を変えられれば、ソプラノ歌手でも地声の高音や地声寄りのミックスボイスももちろん使えるようになります。)

地声の高音域やミックスボイスを使うには、声帯に張りを持たせ、角度を維持する為の、喉の周辺の連鎖のバランスを見つけることが重要なのです。
そのそも、内喉頭筋は繊細で小さな筋肉の集合体ですから、喉頭筋郡の強い力で高音を歌っている人はすぐに喉が壊れてしまうでしょう。
というか、そもそも普通はそんなことはできないと思います。
本当にそんな事ができるとすると、喉全体が固まって発声そのものが困難になるか自分は喉の力で声を維持していると思い込んでいるだけで、実際はその力は声とは関係ない力で、単なる個人的癖で力を入れるていて、それで歌えているのだと勘違いしているだけだと思います。

というわけで、喉の部位の筋肉を、重量挙げのように筋力アップするのは無理だし、やっても意味があまりありません。
声帯を含む喉の色々な筋肉に必要なのは筋肉量ではなく、柔軟性とイメージ対してスムーズに対応する神経回路の繊細な習慣付けが必要なのです。

今はsnsなどで、いろいろな自論が展開され、いろいろな情報が飛び交っています。
それ自体は良い事ですが、アクセスを増やせばお金になる時代でもありますから、人目を引くだけの無責任な言葉や、ちゃんと理解できていない思いつきで書いた、それっぽいだけの情報も多いです
それらを信じた人は、むしろ上達の妨げになってしまったり、場合によっては何年も遠回りする事になるかもしれません

しかし、前回に引き続きこのようなアンチな側面から説明をしていると、不条理に攻撃されるかもしれないので、アンチ的な説明の仕方は程々にしないといけないなと思っています。今回もついつい書いてしまいましたが、反省しつつ今回は終了です。



ここまで読んでいただきましてありがとうございました!!
発声に関して、これからも書いていこうと思いますので、もし
よろしければフォロー頂けると嬉しいです。

今後ともよろしくお願い致します!!



https://www.natural-voice.com/




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