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雨と映画と。

雨になると、どうしても映画を観たくなるのはなぜなんだろう。
いちいちそんな事考えなくてもいいのだけれど、最近はどうも気になって仕方がない。

しとしと雨が降ると、ただでさえいつもより暗い朝なのにカーテンを全部閉めて、エアコンをガンガンにして部屋を冷蔵庫みたく冷やす。してあつあつのコーヒーを淹れて毛布を膝にかけながら、映画を観る。

これがなかなかの至福なのだ。

おそらくだけど、映画が好きなのもあるし、1人が好きなのもあるし、コーヒーが好きなこともあって雨が降るとテンションが上がるのかもしれないが、もう一つ大きな要因があることに気づいた。

小学生の頃から野球を始め、中学、高校と部活に明け暮れていた。家に帰える頃にはくたくたで、やることと言えば、食べる、お風呂に入る、寝る、ほぼ毎日この3つだけだった。

ほぼと言ったのは、例外の日があるからだ。

雨が降ると、グランドが使えなくなる。中学も高校も小さな田舎の学校に通っていたので、雨が降ると満足にボールを使った練習出来なくなる。他の部活動との兼ね合いもあって、体育館を使えるわけでもないから、筋トレなどをしてあとは自主練で!と、その日の練習は終わりになることがほとんどだった。

雨でずぶ濡れになりながらも自転車を全速力でこいで、いつもより少し元気な状態でいつもより少し早くお家に帰る。

すると普段はもう先に畳間に寝床を整えている父が、お酒を飲みながら洋画を観ている。

ー おお。おかえり。今日は早いな!雨だからか練習が出来なかったのか?

なんだろうな。普段はなかなか破天荒で野球に関してはたしかに熱血で厳しかった父親なんだけど、なんだか嬉しそうな表情で話しかけられるとホッとする。

食卓にはまだ湯気がのぼる食事が並んでいて、一刻も早く全部を口の中にかき込みたいと思ってるところに、「先にお風呂にしなさい」と母が言う。

ー 食べてから入るよ。

と言いたいところだったのだが黙って従うことにした。

僕の家は基本大皿で料理が出てきて、全員でつつきながら食べる。洗いものが少なくていいという母の意向と、栄養バランスよりもなによりもとにかくいっぱい食べさせろ!という父の謎の意向でそうなっている。

僕はそれが嫌いじゃない。

ー 最近バッティングの調子はどうだ?

ー 悪くない。

ー 大会でホームラン打ったら、そのボール、お母さんにちょうだいね♪

ー 簡単に言うなよ。

ド派手なアクションを続けている洋画はそっちのけで、テーブルの上では穏やかな日常が映し出されている。

その時間が大好きだった。

温かさ。
雨が降ると映画を観たくなるのは、多分温かさを求めてしまうからなのかもしれない。
あの頃の大好きだった思い出が僕の中には確かに残っている。

雨が降ればまた。

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