わたしの神様
生家の家の裏には祠があった。
小さな小さな森のような真ん中に小さな祠があった。大木には大蛇の神様がいらっしゃるという。
隣家で火事があった際は、晴れていたのに急に雨が降り大木は燃えなかったという伝説がある。
集落を守る「賽の神」であった。
わたしは幼いころから、その身近な神様を信じていて、祠にしょっちゅう手を合わせにいった。
不安の多いこどもだった。
今もだがさらにひどい不安症だった。
この地域を護ってください。
そう祈ることもあれば、
「わたし、作家になりたいです!」
と勝手に報告をすることもあった。
不登校気味だった中学生時代は、登校の前に祠に手を合わせに行くのが習慣になった。
住宅街に囲まれて地域でひっそり大切にされてきた大蛇の神様がわたしはとても好きだった。
大木にいる大蛇様をいつも想像した。
信仰が人の心を支えるのだ、とわたしはこの体験からはっきりと言える。
この国には名もなき神様があらゆる地域の中にいて、その土地を守っていると信じている。
とても心強いのだ。
いまは引っ越して住宅街の内部にある大蛇の賽の神様に逢いに行くことができなくなった。
けれど記憶の中で逢い、感謝している。
ありがとうございます、賽の神様。
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