卵ボーロと言えなくて号泣
クリスマス前の土日に、私と子どもたちはミュージカルに出演した。
子どもはとても柔軟なので、なんでもすぐにおぼえる。でも私は、アドリブはできるがとにかくセリフが覚えられない。
どうしても卵ボーロが、マルコポーロや餃子になってしまうのだ。それが公演2日前くらいまで続いた。しかもそのシーンはラストに向かう重要な場面。普段、裏方に徹している方や共演者から、どれだけ重要なシーンか、あなたがちゃんとやらないとどんなことが起こるかなどを含むLINEが届いた。
もう卵ボーロが言えないなら、グミでも飴玉でも良いから、とにかく言いやすいものに変えてくれていい。間違えるんじゃないかとハラハラして、こちらもセリフが飛ぶ。死ぬ気で覚えて、たのむから。
そう言われた。
私は申し訳なくて、情けなくて、号泣した。
みんな必死でやってるのに、私のヘマで舞台を台無しにすることはできない。でもこのままでは、確実にうまくできない。
だから喉が痛かろうが、唇がひっつこうがセリフを繰り返した。
本番。
結論からいうと、なんとか言うことはできた。
最後の公演のとき、私にLINEを送ってきた共演者が嬉しそうに笑っていた。じんわりと目を赤くして。私はそれを見て泣いてしまった。他の共演者も泣いていた(もちろん観客にバレないように)。
それは私がどうこうではなくて、最終公演だからだが、みんなの意識が一つになって何かを創り上げることの素晴らしさを再認識した。
子どもたちもミュージカル公演を通して何かを感じたのか、所属している劇団を以前よりも好きになったようだ。
ひとりの子は、ミュージカルで歌ったうたをずっと聴いていたいと作曲家の人に相談したところ、作曲家がデモテープを作ってくれたみたいだ。
他の人は子どもを家に呼んで手作り料理をみんなでつくるパーティを企画してくれている模様。前の公演ではそういうことはなかったから、すこしは仲間と認めてもらえたのかな。
この劇団に入って良かった。自信が持てない人間だけど、大丈夫、やっただけ返ってくるから。と知れる場所があると少しだけ前進できる気がする。
あと人を信じることはもちろんだけど、自分を信じることも大事だなと思った。
大丈夫、私ならできる!
その気持ちがあれば、きっと何でも叶う。
(そういえばミュージカルでもそんな歌詞あったなあ)
でも本当、そういうことだよね。
気づかせてくれたのはミュージカルだった。
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