バリウムで笑ったんじゃない
会社の健康診断だった。
診断する内容をちゃんと確認していなかった私が完全に悪いのだけれど、診断直前になって胃部レントゲンがあることを知った。
え、バリウム飲むの…?
バリウムといえば、私の周りでは悪評ありすぎる。及び腰で診察室に入り、担当医に初めてバリウムを飲むのだと伝えるとあっさりした声で「じゃあ、この検診はやめときますか?」と言われる。一応、やめていいの?と聞き返すと「あなたはまだ必須項目になる年齢じゃないですからね」「でもね、家族がいるなら受けておいて損はないですよ!」「問題ないと知ることも健康管理の1つなんですからね!!」とだんだん語気が強くなる担当医。最初の「やめときますか?」はなんだったのか。
結局、バリウムを飲む。思っていたよりまずくはないけど、胃から湧き上がる空気を我慢するのはちょっとつらい。
そして診察台に上がると、別室に移った担当医がマイク越しで「では、仰向けになって右へ3回転してください」と指示を出す。言われたまま、右へ3回転。「では、次は右斜め45度の姿勢で一時停止」「次はまた右へ3回転して」…ってなんだこれ。ボタン一つで日用品が買える時代に、ましてや声だけで照明やテレビをつけられるこの時代に、なぜ私は診察台の上でごろごろ転がっているのか。
笑いがこみ上げてきて、最後らへんはもうゲラゲラ言いながら転がっていた。
担当医はマイク越しに「なんか楽しそうですね」と言い、しまいには「次は左45度でストップ…惜しい、あと15度足りないぃ!」「次は右に…残念、それは左です!」とノリノリな指示口調へ変わっていた。そして終了後に担当医「楽しそうでよかったです」「バリウムの良さを職場の方々にもお伝えください」。バリウムがよくて笑ってたんじゃない。
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