マガジンのカバー画像

コント集

1,004
オチのない世界で僕らは一体何を語ればいいのだろう。
運営しているクリエイター

2023年7月の記事一覧

頭がクラクラする瞬間

 クラッときたらご用心。そんな張り紙をチラ見して僕は駆けた。朝から三十度を超えた夏真っ盛…

秋(空き)時間
9か月前
16

せんせい…

 先生は私の小学生時代の担任だった。先生は毛深いから男子から陰で毛ジラミと呼ばれていた。…

秋(空き)時間
9か月前
14

英国式庭園失踪事件

 ジェイムス・コッヘル卿が昨日から行方不明だと電話がロンドン警察にあったのは一時間ほど前…

秋(空き)時間
9か月前
13

ウェルテル二世の最期

 若きウェルテル二世はロッテ二世に本気の恋をしていた。彼女のためなら死ねる。本気でそう思…

秋(空き)時間
9か月前
18

名物CMディレクター

 能工耕作は今最も注目されているCMディレクターである。彼は主に食品関係のCMを撮っているが…

秋(空き)時間
9か月前
24

カリスマミュージシャンテレビゲームに出る

 アイザック・グレゴリーはメロディック・メタルバンドエターナル・ウィザードのリーダーでギ…

秋(空き)時間
9か月前
16

人はどこまで自認することが出来るのか

 とある成金がメンタルクリニックで診察を受けていた。この男は急に大金持ちになったせいでメンタルを病んでしまったそうだ。 「先生そういうことなんです。ちょっと前まで普通に小銭稼いでいただけなのに、いきなりドカンって株を当ててそれを適当に捌いていたら、みるみるうちに銀行口座がパンパンになって。俺不安で頭がおかしくなっちゃったんですよ。元々貧乏人だからちまちました金の使いかたしかできねえし、いろんな連中が近寄ってきて投資を呼びかけてくるし、中には脅迫まがいのことを言って金をせびる

文字を売る

 無から何かを作り出すと言う言葉が最も当てはまるのは文芸ではないだろうか。美術には材料が…

秋(空き)時間
9か月前
27

遺言状

 故岩松幸次郎の一周忌の日三人の息子とその配偶者たちはかつての幸次郎の家の茶の間で客がく…

秋(空き)時間
9か月前
13

怪盗サファイア

 怪盗はいつだってクールに振る舞わなきゃいけない。顔色一つ動かさずにターゲットを盗み素早…

秋(空き)時間
9か月前
12

近代の伝統を味わう

 カツレツが日本に入ってきたのは文明開花の頃だが、それから百年以上経ち、カツレツは西洋の…

秋(空き)時間
10か月前
11

命懸けの第九

 現代最強のシンフォニストと呼ばれる作曲家大来響は、長い苦闘の末とうとう交響曲第九番を完…

秋(空き)時間
10か月前
16

うどんで綺麗になる

 彼女たちを見た瞬間、確かに透き通るような肌の人っているんだと思いました。私は同性なのに…

秋(空き)時間
10か月前
19

校正の極意

 文芸誌の編集者たちは先ほどからずっとテーブルの上に残された原稿用紙の束をまるで突然入ってきた犬が漏らした糞のように見ていた。 「どうするんですか編集長。本気でこんなもの来月号に載せるんですか?」 「いや、載せなきゃまずいだろう。断ったりしたらうちの幹部連中に絶対文句言ってくる。私がわざわざ編集部に持って来てあげた原稿を掲載拒否するなんてね。どうやら今の文芸誌にはろくな審美眼を持つ人間がいないようだ。全員総入れ替えしたらいいのではないか。なんなら客員編集員として私の教え子