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短編

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2023年11月の記事一覧

キャリー・ザット・ウェイト

 ビートルズの『アビーロード』が爆音でかかる中、男と女が重い荷物を持って歩いていた。二人…

秋(空き)時間
5か月前
14

ノッポのドイツ人はなぜ手袋をしているか

 ハイキング中のドイツ人が異様に厚ぼったい手袋をしていた。登山ならともかくただのハイキン…

秋(空き)時間
6か月前
20

クレーム処理の達人

 機密情報と個人情報の関係から決してその名を口に出来ぬ某日本最高峰のホテルにクレーム処理…

秋(空き)時間
6か月前
20

大人の純愛

 満員電車の優先席に中年のデブの男女が並んで座っていた。二人の前には老人が杖を振わせて立…

秋(空き)時間
6か月前
19

和製ピカソと呼ばれた男

 その昔和製ピカソと呼ばれた画家がいた。この画家横山天心はその通りまるでピカソをなぞるよ…

秋(空き)時間
6か月前
27

メロドラマ

 時計の針を逆回転させるように、落ちた砂を吸い上げるようにもう一度あの頃に帰れたらなんて…

秋(空き)時間
6か月前
13

続々、札幌でサッポロ一番を食べる! ~僕とサッポロ一番のハネムーン

 三度目の札幌だった。九月のシルバーウィーク。白髪の一本も生えていない僕はサッポロ一番を胸に抱いて札幌に降り立った。もう君を離さない。僕らの絆はこの札幌の地でダイヤモンドよりも固く結ばれたのだ。僕は胸に抱いたサッポロ一番に語りかける。 「三度目の札幌だよ。もう君を離さないよ」  僕はこの言葉通り今回こそサッポロ一番のみそ味を見失わず食べ尽くすとサンヨー食品の本社のどこかに鎮座している神に向かって誓った。もうサッポロ一番を札幌の街に連れ出してススキノの風俗男に攫われるなんてしな

パリピと純文学の間で

 戦後世代初の芥川賞作家であり、二十世紀後半の日本文学を代表する作家中上健次は新人の頃、…

秋(空き)時間
6か月前
15

アリオルトルとマルコス

 昔ギリシャのある地方にアリオルトルとマルコスという哲学者がいた。二人は共に同じ家に住み…

秋(空き)時間
6か月前
8

詩を描く少女

 言葉で世界は作れるもの。なんて昔は本気で思っていた。あらゆる言葉を紡いで私だけの世界を…

秋(空き)時間
6か月前
18

ノーベル文学賞に懸けた作家たち

 芸術の中で一番偉いものは文学である。それは芸術のなかで唯一文学だけがノーベル賞に入って…

秋(空き)時間
6か月前
31

帰還

 帰還は必ずしも喜ばしく感動的なものばかりではない。中には悲しいほどに悲劇的なものもある…

秋(空き)時間
6か月前
18

榊原部長はなぜ昼食をひとりで食べるのか

 今年部長になった榊原さんは何もかもが古い我が社においてきわめて異例の出世を遂げた人だ。…

秋(空き)時間
6か月前
46

鈴木さんと佐藤さんの結婚

 2025年、長年苗字ランキングのトップだった佐藤がとうとう鈴木に追いつかれた。このニュースは世に少なからず衝撃を与え識者はこぞって原因を論じ立てた。長年一位だった事で生じた佐藤の驕り、いずれトップに立ってやると堪えて雌伏の日々を過ごした鈴木。識者は社会学や統計学のデータを用いて原因を論じたが、誰もこの問題に決定的な解答を与えられなかった。鈴木と佐藤は今は同数だが、今後はどうなるかわからない。首位陥落の危機に覚醒した佐藤が第四コーナーで鈴木を引き離すか。あるいは鈴木がラストス