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都内の蛇信仰を巡って 序章




はじめに

まず、このタイトルに幾ばくかの関心をもってこちらの記事を覗きにきてくれた読者の方々は、無類の爬虫類好きか、はたまた蛇という不気味で、どこか神秘性を帯びたその生物の人間との関わりに興味を抱いている、ごくごく少数の物好きな識者と推察する。

私が「蛇を祀る人々」というテーマに関心を持ったきっかけは、今から10年ほど前、生まれ故郷での調査経験がきっかけとなった。はじめは地元の人知れぬ山奥の湖沼に伝わる大蛇の伝説について、研究を始めたのが事の始まりだった。

私が育った東北のとある山里では、今でも伝説が生き生きと語られており、伝説に出てくる大蛇の史蹟や果敢に大蛇と闘った猟師の子孫が現存していたりと、とにかく都会では考えられないある種の蛇信仰が色濃く残る地域であった。

時は流れ、現在は東京で会社員として働きながら、休日は図書館や各所へ出かけ郷土研究や執筆活動を行っている私だが、ふとこの調査の事を思い出し、都内での蛇を祀っている場所を探ってみると、意外にもあちらこちらに現存しているではないか。

これはいい機会だと思い、今回東京での蛇を祀る寺社や都内での大蛇伝承について自身が研究調査してきた経験も踏まえ、現地を訪れながら描き出してみようと思った。

ご存じの通り、蛇を祀る人々・そして蛇に関する伝承は日本・世界各地に数多存在し、その歴史も大変長い。

民俗学・歴史学を中心にその研究蓄積も膨大である。
この蓄積された膨大な先行研究に関して一石を投じるつもりは毛頭なく、あくまでより多くの人に蛇を祀る事例やその信仰について知ってもらうきっかけとなり、一個人の私見を考察せしめようという試みであるので、軽い気持ちでページをめくってほしい。

ただ、蛇に関して言えば筆者はどちらかというと好きな方なので、本論を通して蛇・そしてそれを取り巻く人々への思いが読者に少しでも伝われば幸いである。

それではこの不思議で、不気味で、そしてどこか神秘的な蛇の世界へ、読者諸君をご案内するとしよう。




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