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琵琶を聴くための基本知識 その2 〜主な流派5つを抑える〜

1・薩摩琵琶正派(さつまびわせいは)

他の流派に比べて、古い伝統をもつ流派。
発声と演奏は豪放で、大きなバチで激しくかき鳴らす奏法は迫力があり、武士に好まれたのも納得。
演奏の特色としては、即興的であること。
歌の特色としては、これも即興的な性格を持っていて、力強い発声、時には雄叫びのようなさらなる力強さで表現する。

東京の琵琶学演奏大会では、私が見てきた限り、
薩摩正派の出演は多くない。
おそらく、東京ではなく九州地方に在住者が
多いのではないかと思う。


2・筑前琵琶

明治時代中期に確立された流派で、創始者は橘旭翁(たちばな きょくおう)氏。
氏の没後に「橘会」と「旭会」の二派に分かれて、現在に至っている。
 
筑前琵琶は「娘琵琶」の異名を持つほど女性に親しまれたこともあってか、その音楽性も女性的であると言われる。
薩摩琵琶は歌と楽器は交互に演奏されるのが基本だが、筑前琵琶は三味線のように、歌いながら琵琶による伴奏を入れることもある。
 
琵琶奏者として現役では唯一の人間国宝、奥村旭翠(おくむら きょくすい)氏は、筑前琵琶奏者です。
 
東京の演奏会では、多くの演奏者を見ることの出来る流派です。
女性奏者は白い羽織のような衣装で登場することが多く、琵琶が映えて超絶カッコいいです。真っ赤な琵琶を使ってらっしゃる方もいます。カッコよすぎて鼻血が出そうです。


3・錦心流琵琶(きんしんりゅうびわ)

薩摩琵琶の一系統で、創始者は東京府芝区虎ノ門出身の永田錦心(ながた きんしん)氏。
錦心流は、薩摩正派に比べると、弦が細くてバチの使い方がおとなしい上、演奏も歌も優雅で洗練されており、都会的なカンジがするらしい。

薩摩正派との類似点は、曲の全体構成や節回し、曲調などに見られるとのこと。

明治三十年代に立ち上げられた錦心流は、美男美声で才能の塊であった永田錦心のカリスマ性もあってか瞬く間に大人気となって、当時の琵琶ブームを牽引していたそうだ。
 
東京の演奏会では、多く見ることの出来る流派で、「錦心流琵琶 全国一水会」はかなり大きな組織だと思う。
 


4・錦びわ(にしきびわ)

創始者は、現東京都墨田区出身の水藤錦穣(すいとう きんじょう)氏で、永田錦心氏の発案を受けついで五弦五柱の新しい琵琶「錦琵琶」を考案した。
 
錦びわは薩摩の系統でありながらも、筑前琵琶の手法を多く取り入れており、長唄や江戸三味線の要素も大きく取り入れている。
 
錦びわのわかりやすい特色として、歌を劇のセリフのように入れる部分があげられる。これは筑前琵琶に見られる、節を弱めて歌詞のコトバを際立たせる手法をさらに徹底させたものと見られ、浄瑠璃の領域にも踏み出しているように感じられるそうだ。
 
水藤錦穣氏も永田錦心氏同様、美女美声でカリスマ性があり、130曲以上を作曲するなど、作曲家としても頻繁に名前を見ることが出来る。
 
東京の演奏会でも多く見ることの出来る流派で、
初心者が聴いていても、ハッとさせられる部分のある演奏をする方が多いと感じる。
 


5・鶴田流琵琶

創始者は、北海道出身の鶴田錦史(つるた きんし)氏。
薩摩琵琶の一系統であるが、鶴派琵琶と呼ばれる五弦五柱の琵琶を用いる。
 
創始者の鶴田氏は、楽器の改良、奏法の開発の他にも、琵琶と西洋楽器のコラボレーション、音の増幅装置の開発、海外公演など、琵琶の周辺の展開にも意欲的に取り組み、琵琶の世界を大きく押し広げた功労者でもある。
 
鶴田流は薩摩琵琶本来の力強く、自由闊達な演奏を本懐としており、それでありながらも現代音楽としての琵琶楽曲にも対応する柔軟さも持ち合わせている。
 
東京の演奏会では演奏者を多く見ることが出来る流派で、とにかく楽器が大きくて、上部の構造はいかついし、バチも大きくて、見栄えも抜群でカッコいいので、見ただけで嬉しくなる。

まとめ

 
他にも平家琵琶、肥後琵琶など、いろいろな流派があるそうですが、初心者が演奏会でよく見るであろう流派を5つ、私情を交えながらまとめてみました。
演奏会によっては、流派も実力もさまざまな演奏者を聴くことになります。
流派と特徴を大まかにでも知っているだけで、その演奏者が何に挑んでいるのか、達成出来ているのかどうか、なんとなくでもわかるので、退屈しないで楽しめます。

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