急展開

大好きな人と、電話をしてデートをする事が出来た。彼が大好きな和菓子を、手紙と共に渡したその日の夜。すぐに電話をくれた彼。
彼が好きな和菓子を、お裾分けだと嘘を付いて渡していたのだけど、嘘を見抜かれていたようで。

彼から、1つだけ願いを叶えてあげると、言ってくれた。職場の人達が居る前で、笑いながら。私も、えー?本当に?何でも叶えてくれるの?と笑った。冗談だと思ったから。

休み明け、彼はお願いは決まった?と私に聞いてくれた。私は驚いて、一瞬、言葉に詰まった。やっとの思いで紡いだ言葉は、「本当に、叶えてくれるの?本当に?」だった。彼は笑いながら本当だよ〜って言ってくれて。じゃあ、考えておくねって答えたら、いっぱい悩みなってまた、満面の笑みで。

何度かそんなやり取りをして、冒頭の電話の話に戻るのだけど、「今日もお菓子ありがとうね!美味しかったけど、お願いも聞いてないのに。もしかして電話だけでいいの?」と聞いてきた彼に、うんって言ったら「本当に?」と。仕事が終わって家でのんびりしていた時間。しかも次の日は休み。お酒を飲んでいて、ほろ酔いだった。だから私は、「デートはしたいかなぁ」って、冗談のつもりで言ったら彼は「じゃあ、風呂に入ったら迎えに行くよ。何時がいい?」と言ってくれた。

電話が来るとも思って居なかったし、デートを承諾してくれ、しかもそれがすぐだなんて。思ってもみなかった事態に私は舞い上がった。いそいそと精一杯、可愛らしく見えるようにメイクをし服を選んで夜道を歩いた。待ち合わせ場所までは少し距離があるから、彼は心配して2度も電話をくれた。

彼の車に乗り込み、深夜のドライブ。狭い車内で、彼は自分の事を色々と話してくれた。私は彼の手を握って、彼の横顔を見つめて相槌を打った。

穏やかで、落ち着いた優しい声で話す、年上の彼の話は、私が歩んで来た人生なんてぬくぬくとぬるま湯につかった、箱入り娘のようで、恥ずかしかった。そして苦労ばかりを背負っている彼の人生に泣きそうになった。私が、泣く権利なんてないのに。

人気の無い駐車場に停車して、色々な話をする。寒くないかと、彼はしきりに私を気遣ってくれた。ふざけたつもりだった。「ぎゅって、抱き付くから大丈夫ですよ」と、抱きつこうとした瞬間にキスをされた。

優しくて甘いキス。何度も何度もしてくれて。その途中、シートを倒された。慣れた手つきに、年の差をひしひしと感じた。そして、拒む選択肢などはなく、男女の仲になった。

私から、そう望んだ。優しい声で労ってくれる彼の腕の中で、幸せを噛み締めた。そして改めて思う。彼の生活に、土足で踏み込んだりはしないから、恋人になりたい。そう、はっきりと言いたい。言ったそばから、泣いてしまいそうだけれど。


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