妄想オタクは死神に語る エンドロール
『後継者×真実』
??:あーすっ……かさーん!!
白く黒く。淡く濃い。清く濁り。白くて黒い。
そんな対を成す、矛盾と呼ばれる事象の全てが行き交う世界で1人の少女は走り出す。
そして目の前に現れた女性に飛びつき、抱きしめた。
飛鳥:おぶっ…
飛鳥:帰ってきて早々やめてよ、さくら…
さくら:えへへ、おかえりあすかさん!
抱きつきながら頭を撫でられたさくらと呼ばれる少女は満遍の笑みで飛鳥を見つめる。
さくら:今回も……どうしたの?泣いてたの?
飛鳥:げっ、めんどくさい奴に勘付かれたか…
実際その通りだった。
この場所に帰ってくれば、どうせさくらは飛鳥の気配に勘付いてはすぐに駆けつけてくる。
だからこそ涙を流したその後、30分ほど病室のそばで時間を潰していたのだった。
さくら:ねぇ、やっぱり泣いてたよね?ねぇ
飛鳥:あー、はいはい。たまねぎたまねぎ〜
飛鳥を溺愛するため、かなり重いさくらであるが、自由奔放な飛鳥はこのように適当にいなしていた。
抱きつくさくらを放り投げ、飛鳥は歩き出した。
さくら:もー!飛鳥さん!待ってよー
そう言って、さくらは飛鳥の後を追う。
さくら:そう言えば、あいつどうなったんですか?
飛鳥:あいつ?
さくら:あの銃弾が腹に詰まってた子、なぜか私も手伝わされたあの"妄想"が願いの
飛鳥:あー、そういやそうだったね
飛鳥:さくらもそろそろ1人前になる頃だし、研修的な感じで手伝ってもらってたっけ?
さくら:そうですよ、した事ないゲームやらされて、しかもあんな可愛い子キャラ…
さくら:飛鳥さんの命令じゃないならもう2度とやりませんよ、あんなの
飛鳥:そう?私は可愛かったと思うけどな
さくら:もちろん飛鳥さんがあぁいうタイプの子が好きならずっとあれでいますよ!!
飛鳥:面倒臭いからパース
さくら:もー!飛鳥さんったら!
飛鳥:それで?経験してみてどうだった?死神としてのやるべき事を…
さくら:……
突然の問いかけにさくらは固まった。
それも当然だ。彼女達がつい先ほどまでしてきたのは、現実とはかけ離れた事をしていたから。
さくら:正直、あれで報われたのか…
さくら:私には…彼の気持ちが全く理解出来ませんでした…
愛する飛鳥を前にしているからなのか、さくらは嘘をつかず、飛鳥の行いに反論をした。
飛鳥:まぁ、それもそうだろうね
飛鳥:でも、私達だって彼らに寿命を分けてもらえないと生きてはいけない
飛鳥:そうでしょ?
さくら:ま、まぁ……
飛鳥:だからアンタが納得行かなくても、この先はあんな風に私達は生きていくしかないってわけ
さくら:う〜ん…
どこか納得行かなそうなさくらの丸い頭を大きく撫でた後、飛鳥は笑った。
さくら:ん
飛鳥:私も昔は反対だったよ
飛鳥:人間から寿命を貰い生きながらえる、そのかわりもらった寿命の少しを媒介にして願いを叶えてあげる
飛鳥:そんなの詐欺みたいだし
飛鳥:人を殺すくらいなら私が死ぬ。そう思うことも何度かあったよ
飛鳥:でも、それでも、私達はみんなの願いを叶え、少しの間でも人間に寄り添える
飛鳥:その力を使って人々に幸せを与える
飛鳥:そんなお花畑みたいで、偽善者みたいな考え方も悪くないと思うよ
さくら:う〜ん、そんなものなのかなぁ…
飛鳥:まぁ、その内アンタも出会えるよ
飛鳥:さくらが自分の持つすべての力を使ってあげてでも、幸せになって欲しい人が…
飛鳥:きっといつかね
さくら:出会えるのかな、そんな…奴
そう言って、さくらは肩に掛けた鞄の紐を握る。
飛鳥:きっとその小説の主人公みたいな人間に出会える日が来ると思うよ
さくら:……
飛鳥:だから、期待しときなよ
そう言って飛鳥は、再度さくらの頭を撫で、「行ってくるね」という言葉を残し、消えた。
さくら:そんな奴、本当にいるのかなぁ…
――
とある日のホームルーム。
〇〇:1年間、よろしくお願いします
〇〇:黒崎〇〇です。好きなものは…小説です!
単純かつシンプルな自己紹介をした少年は、最後に頭を下げて、席に座った。
さくら:……
なぜかさくらはそんな少年に、目を奪われた。
〇〇:あ、えっと、遠藤…さん?だっけ?
〇〇:どうしたの?そんなにじっと見て……
無意識に眺めていたからか、さくらは気づかれていたとは思わず、慌てて言った。
さくら:あっ、えっ、えっと……
「まぁ、その内アンタも出会えるよ」
さくら:案外早かったじゃん…
〇〇:んえ?
さくら:ふふっ、なんの小説が好きなの?小説オタク君
…to be continued
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?