ぴえんぴつ(SS No.61/毎週ショートショートnote)

結愛は親友だが、ときどきセンスがわからない。
「ストレス発散しな」とくれた鉛筆だってそう。
毒々しい水玉模様の本体から伸びたバネの先で、瞳を潤ませた丸顔、10円玉大の「ぴえん」が揺れる。

ストレス、と聞いて思い当たるのは、彼氏の諒馬だ。
思い起こせば、結愛に会うたび愚痴を聞かせてしまっていたと反省する。

デートに10分遅刻してきた、誕生日忘れられてた、他の女子と喋ってた……口にするまでもないモヤモヤを込め、小憎らしい顔を弾く。びよんびよんとのたうちまわるのを見ると、確かに少しスッとした。

久々に諒馬から誘われ、うちでテスト勉強をすることになった。どうせ目当ては授業ノートだからと高鳴る胸を抑える。

取り出した筆箱から「ぴえんぴつ」が転がり出た。
「あっ!あんたかい?彼氏!」
目を丸くする私達を尻目に甲高い声で捲し立てる。
「よーく2人で話さなきゃいけないよ!ぶつける相手を間違えないで、ね!」
それっきり、ぴえんは何も言わなくなった。

(410字)

こちらの企画に参加させていただきました!
いつもお世話になっております。
ちなみに元のお題は「涙鉛筆」だったんだよーー!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?