![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81082593/rectangle_large_type_2_6aa40e424a9e6d17982cb2d9fff6ad92.png?width=1200)
ショートショート王様(SS No.59)
可哀想な農夫は玉座の前ですっかり縮こまっています。
「さあ物語をせよ、つまらなければ打首だぞ」
王様が歌うように言いました。こうして気紛れに誰かを招いて小話をさせるのが、王様の趣味でした。
農夫は覚悟を決め、訥々と語り始めました。
主人公はこの国の始祖たる男神。
戦火に国乱れるとき、神は民草を救うべく鷲の姿で地上に舞い降り、鋭い鉤爪で敵兵を八つ裂きにするのです。
勇猛な物語に王様は心を躍らせました。
農夫が不意に口を噤みました。王様は訳を尋ねます。
「家で病に伏せる女房が気がかりで…物語どころでは」
唇を震わせます。
王様は大臣に命じて立派な病院を建てました。
さて続きをと促しますが、まだ農夫は沈んだ顔です。
「病院のお代が払えませぬ」
王様は国民にお金を配るよう命じました。
「これで心配事は無かろう。続きを話すのだ」
農夫はしゃんと立ち上がり微笑んで
「続きは今、王様がご覧になりました」
そう言って鷲の姿になり、天高く飛び立ちました。
(407字)
こちらの企画に参加させていただきました!
いつもお世話になっております。
1000本達成!すごーーい!!
毎回力作揃いで刺激をもらいつつ、楽しく読ませていただいています。
いつか一作に選んでもらえるように頑張ります…!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?