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声と触れ合う

ホストクラブに通ったこともなければ、ホストを特別好きだと思ったこともないんですが、昔、某動画サイトで見たホストのドキュメンタリー番組が面白くて、色々見漁ってる時期がありました。

楓十座さんという大阪のホストと、陽生さんという東京のホストの売上対決はとても有名だと思いますが、ドラマチックな展開で面白いですよね。ネタバレになっちゃいますが、陽生さん優勢のまま迎えたラストスパート、終了までのカウントダウンも始まり、もうこれは勝負あったか?と思われたときに、十座さんの大口のお客様が

「エリプスと、ベルエポック」

と、オーダーするんです。
周りのホストは「エリプスとベルエポック?いくら?」って感じで、分かってるのか分かってないのか、ちょっとどたばたした雰囲気だったんですが、その時点で十座さんだけは桁違いな金額の大きさを分かっていて

「ほんまに言うてんの?」

と、浮かれるでもなく、喜ぶでもなく、ただただ真剣に確認してる姿がとても印象的でした。この状況だと、勝利を確信して舞い上がったり、はしゃいだりしそうな気がしますけど、金額の大きさ(たしかその額、1000万円以上だったはず)に驚いてるのもあっただろうし、そのお客様を思っての確認でもあっただろうし、一瞬映った、真剣に問いかけるその姿が、私のイメージするホストと全然違っていたのでとても印象に残ってます。

そんな十座さんのエピソードでもう一つ印象に残っているのが、別の売上対決の時の動画にて、出勤前の自宅の様子を取材されたときのこと。自分のところへ来てくれるお客様へ営業メールを返す数が1日(かな?)に200件を超えるが、返信にはこだわりがある、という内容。

こだわりというのは「返信は基本はメールで」ということだったんですけど、その理由を十座さんは

「声は体の一部なんで、それ(声)と触れるのは、(お店に)来てくれた時に」

って話すんですよね。文章にするとキザな感じしますけど、インタビューの雰囲気は関西人らしくちょっと冗談交じりな明るい感じで話してました。

私、ここにけっこう感動したんですよね(え?しないって?)。

声は体の一部だから、触れ合うのは直接会ったときだけ。
言ってる内容に感動というよりも、その表現に感動したと言ったほうがいいかもしれないです。声って、触れ合うものなのか、と。声についてそんな風に考えたことが無かったので、目から鱗と言いますか。姿形を伴わないけれど、確かに存在する声というものは、音として聴くだけではなく、触れ合うことが出来る、というその考え方、私は好きだなぁと思いました。

話すことについて、こういう考え方を持っているからこそ、言葉に嘘が無いんだろうなぁと、動画を見ていて思いました。まあ、私はお客ではないので、あくまで動画内での、ごく一部の姿を見ただけの印象でしかないのですが。

なぜ急にホストの話題…ってかんじですけど、仕事中にふと、あのドキュメンタリー面白かったなぁと思い出したもので。ホストの仕事に良いも悪いもとくに無いですが、真剣に取り組む人の姿は印象に残ります。そして魅力的です。言葉に嘘が無いというのは、簡単そうで実は難しい。だからこそ、言葉に嘘が無い人の言葉は、人を惹きつけるんでしょうね。

声と触れ合う。うん。好きな表現です。


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