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ごちそうさまのあとで

消えそう消えそう
コンロの火で乱切り茄子を
炒めて炒めて
味噌でからめて

あきたこまちは
こぶりの茶碗にてんこもり
鍋底の形の染みがある
こぢんまりとしたテーブルにつく

リモコンは
八か四か 六か七か
結婚離婚 ゴシップス
感染に暴動にスイーツ

もらい悲しみ
よるべない身の
あはれ橋を持つ手がかきこむ白米

仮住まいのはずが
入居もうすぐ五十年目
どんどん住みやすくなる
1K の間取りよ

甘やかな香りにひかれて
幸せを追い求める姿は
幸せではないと
どうか責めないで

残さずたいらげて
満足と脱力と虚しさと
わずかばかりの熱のこもった
ごちそうさまを
言う瞬間の手の合わせが
そのまま畏怖なるものへの祈りとつながり
崩れ落ちぬように
拳をしっかり握ってテーブルを押して立ち上がる

この先の時間を
始末の時間にしてしまうのは
あまりにも あまりにも

くすぶる種火が青く揺らいでいる

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