第11回 「言霊」の話
私達は毎日、「言葉」を使います。
身近過ぎて意識することは少ないと思いますが、言葉を使えるのは人間だけなんです。
言葉がなければ、これだけ複雑で高度な文明を築く事は出来なかったでしょう。
「言葉」には、我々が思っているより大きな力があるのです。
今日は、言葉の持つ力についてお話をさせて頂きます。
昔から日本人は、「言霊」と言って、言葉には霊力が宿ると考えていました。
簡単に言えば、いい言葉を発すれば良いことが起きて、悪い言葉を出せば悪い事が起きるという考え方です。
いい言葉とは、ついてる、嬉しい、楽しい、ありがとう、感謝します、愛しています、許します等の、人に安心を与え、認め、許してあげる言葉。
悪い言葉とは、ついていない、不平不満、愚痴泣き言、悪口に文句、心配事、許せない等、聞いた人を不安にさせ、緊張させ、暗くする言葉の事です。
つまり明るい言葉を出して、人を褒めて喜ばせていたら、自分にいいことが起きてくる。暗い言葉を出して、後ろ向きな事ばかり言っていると、不幸な事が起きてくるんです。
最近になって、この考え方が、いろんな分野で注目されています。
例えば、最近の脳科学では、「脳は主語を理解出来ない」という事が分かって来ました。脳は、言葉の意味は分かっても、誰に向かって出した言葉か判別できない。つまり、人に対して言った言葉でも、自分が言われたのと同じように取るのです。
では悪口を言った場合はどうなるのか、考えてみたいと思います。
スネ夫がのび太の陰口を言いますよね。「のび太は本当にダメな奴だな」と。
この時スネ夫の脳は、主語が分からないので、「本当にダメな奴だ」という部分しか理解できません。つまり、人に向かって「本当にダメな奴だ」と悪口を言うと、自分自身が人からそう言われたのと同じ精神状態になるのです。
人は、悪口を言われた時、自尊感情が傷付いて自分の評価が下がり、体には「危急反応」という現象が起こります。
これは動物時代の名残で、攻撃されることでいつでも戦ったり逃げたり出来るように、体が緊張状態になる事です。
なので、いつも人の悪口を言う人の精神状態は、常に人から悪口を言われているのと同じ事になります。言えば言うほど心が傷付き、体はこわばっていくのです。
では逆に、人を褒めると、どういう事が起こるでしょうか。
脳は主語を理解できないので、自分が褒められていると思うんです。
褒められるという事は、認められ、許されるという事で、安心につながります。そのため人を褒めればほめるほど、周囲の人が安心するのはもちろん、自分の安心感も増していくので、負の感情が減り、精神的に安定します。
そして人間の体は、不安になるとこわばり、安心すると緩むという特徴があるので、人を肯定する言葉を出すほど、自分の体調も良くなります。
こうして、心と体の状態は、出す言葉によって変化します。
人を褒めて喜ばせる事は、自分が褒められているようなもの。心身が安定して、楽になる。
対して、愚痴や不満や泣き言を言う事は、人から悪口を言われているようなもの。自分の心身が不安定になって、辛くなるのです。
もう一つ、言葉には「引き寄せる力」というものがあります。
例えば、うどん屋さんに行って、いくらうどんが食べたいと思っていても、「かつ丼」と口に出して言うと、かつ丼が出てきます。
つまりこの世の中では「人の思い」よりも「言葉」の方が強いのです。
そして言葉の力は、私達が思っているより強力です。口に出した言葉は、その通りの現実を引き寄せる力があると言われているんです。
自分はいい人間だといくら心で思っていても、口に出す言葉が愚痴や不満の言葉ばかりだと、結果的には愚痴や不満を言う人や、不幸事を引き寄せます。そしてまた不機嫌になってネガティブな言葉を使うという、「不機嫌の悪循環」が起きてくるのです。
愚痴や不満をいくら口に出しても、状況は変わりません。そういった時こそ意識して明るい言葉を出したり、人を褒めることが、いい人生を引き寄せるコツです。
今日のキーワードは、「言葉から変える」です。ついてる、嬉しい、楽しい、ありがとう、感謝します、愛しています、許しますという言葉を出して、積極的に人を褒めましょう。
もっと進んでは、目標を決めて、それを言葉に出すことを意識すれば、黙っているよりも到達するのが早まります。
生まれ持った顔かたちや、親、家庭環境など、変えられない所は沢山ありますが、言葉ならすぐにでも変えられます。変えられる所をどんどん変えて行くことが、上手く行く秘訣です。
例えば、日本の皇室を始めとして、全世界の財閥や名家など、責任の大きい家庭では、必ず教育の一環として後ろ向きな言葉を使わず、全て前向きで綺麗な言葉を使わせるという「言語調整」を行うそうです。それだけ言葉は重要視されているんですね。
たかだか言葉一つと思うのは簡単ですが、大きな事を成す人は、そういうところにも目を向けているのかもしれません。
言葉をきちんと使う事は、一つの修行です。自分の出す言葉をしっかり意識して、人生を前向きに変えて行きましょう。
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