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桐島あお
2023年7月31日 01:32
へびは恥じていました。手足のないことが恥ずかしくなったのが、いつのことだかへびにはもうわかりません。生まれたころは気にもしませんでしたのに。一度芽吹いた思いはどうにも腑の裏にこびりついてしまって、いくら身体を地面になすくったとて剥がれるものではないのです。何にも会いたくないけれど、何もいない場所というのは見あたりません。トリもネズミも、ムシでさえ、手足のようなものをぶらさげています。舌を弾ませると
2023年7月31日 01:49
チカちゃんは恋人がいると言う。「ねえこの子あんたに似てない?」ひどい、と私は思う。チカちゃんの言うその赤ん坊は猿みたいだから。チカちゃんは私の返事がないなんてどうでもいいみたいに振る舞い、赤ん坊にばかり構った。親戚の子どもだというその子は、チカちゃんにぜんぜん馴れないみたいでよく泣いた。赤ん坊が泣きだすたびにチカちゃんはその子のオムツを外し、汚れていないそれを丁寧に取り換える。期待外れの接
2023年7月31日 01:50
学校から駅までを結ぶ長い長い帰り道、リリコと二人音楽を聴いて歩いた。リリコは私よりずっと背が高いから、歩幅がずれるたび分け合っているイヤホンがたわむ。外れそうになるそれを中指で抑えて、重い鞄を肩に掛けたり肘に掛けたりしながらよたよたした足取りで帰り道を進んだ。醜さのあまり群れからもれたライオンが、さみしく死んだあと花になりましたっていう悲しいくせに軽快なリズムの音楽は、リリコの好きな歌。私には
2023年7月31日 01:51
五歳のころ。私立小学校を受験することになったわたしは、はじめて塾に通った。することになった、と言うと母は怒る。人が決めたことみたいに聞こえるから。自分で決めたことには自分で責任を持ちなさい、と母はよく言った。はじめて塾に行く日、母とランチに入った店のオムライスは学生仕様なのか異常に大きく、食べきれない、とすぐにわかった。けれど自分で決めたメニューだから、ばかに大きなスプーンに少しずつケチャップライ