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自分がしたことのない仕事をしているメンバーに、リーダーとして出来ることってなんだろう。

■はじめに


世の中の流れははやく、今日の成功体験が明日も活かせるかというとそうでもありません。みなさんは上司として、メンバーよりも詳しい領域はありつつも、メンバーが気になることすべての答えを知っているわけではありません。では、「答えを教えられない領域」は、上司としてメンバーを育成するために出来ることはないのでしょうか?
 
私は以前「自分がやったことのない仕事をするメンバーをマネージする」ことにとても苦労をしました。そして今でも正解は見えていません。一方で「こういう働きかけをすれば、メンバー自身が自分で学んでいけるのだな」と感じる関わり方もわかってきました。それは、みなさんも絶対にどこかで聞いたことがあるであろう「経験学習」の実践です。
今日は具体的に「どういう働きかけをすればいいのか」というのを、経験学習モデルをもとにお伝えできればと思います。


■経験学習について


経験学習モデル(Kolbの経験学習サイクル)を活用すると、学びを深めるための構造化されたプロセスを提供できます。このモデルは以下の4つのステージで構成されています

  1. 具体的経験(Concrete Experience) - 実際に経験したこと

  2. 振り返り(Reflective Observation) - 経験について振り返ること

  3. 抽象的概念化(Abstract Conceptualization) - 振り返りから学び取った教訓や原則を見つけること

  4. 能動的実験(Active Experimentation) - 新たな学びを次の行動に活かすこと

■具体的な行動から、学習してもらうためのリーダーとしての関わり方

メンバーに経験学習をしてもらうためには、日々の経験から振り返って学びを抽出し、次の行動につなげる必要があります。「今週のハイライト(どんな経験をしたか)」を具体的に話してもらったうえで、振り返って深ぼるための質問を投げかけて、学びを深め、次の行動に繋げていくサポートをしましょう。
 
具体的経験(Concrete Experience)

  • 今週どのような経験をしましたか?

  • 印象に残った出来事やチャレンジは何でしたか?

  • それはどういう風に始まって、どのように進行しましたか?

 振り返り(Reflective Observation)

  • その経験についてどう感じましたか?

  • 何がうまくいきましたか?うまくいかなかった点は何ですか?

  • その経験から何を学びましたか?

  • 他のメンバーや第三者の視点から見た場合、どのように見えるでしょうか?

 抽象的概念化(Abstract Conceptualization)

  • その経験からどのような教訓や原則を引き出せるとしたら何でしょうか?

  • その経験を通じて、自分の考え方やアプローチはどう変わりましたか?

  • この状況の理解を深めるために、どのような理論やモデルが役立つと思いますか?

  • この経験があなたの今後の仕事にどのように役立つと思いますか?

能動的実験(Active Experimentation)

  • 次回同じような状況に直面したら、どのように対処しますか?

  • 今学んだことをどのように次のプロジェクトやタスクに活かしていきますか?

  • 他のチームメンバーにもこの学びをどう共有していきますか?

  • この学びを実際に試すために、どのような準備が必要ですか?

■それぞれのフェーズでうまく進めるためのコツ

経験学習を進めるためには、まずは「多様な経験をしてもらう」ことが必要です。そのため行動ができないメンバーに対しては、「行動してくれないと何もフィードバックができない」と伝え、半ば強制的にでも行動をさせに行きましょう。(行動については、「具体的な行動がイメージできているか(Howのインプットは十分か)」「その行動を自分が出来るイメージが出来ているか(自己効力感の整え)」の確認をし、その二つを持たせられるようにサポートしましょう)
 
さて、具体的な行動を実施した後は振り返りです。どんな経験であれ、リーダーが質問を投げかけることで学びの総量は圧倒的に増えます。メンバーの仕事とその捉え方に興味を持って、「もっと良い仕事ができるようになる」ことを目指して関わっていきましょう。

具体的経験(Concrete Experience)のコツ

1.    多様な経験を促す:

  • メンバーが様々な種類の経験を積むことを奨励します。新しいプロジェクトやタスク、役割を任せることで、多様な経験が得られます。

2.    オープンな環境を作る:

  • メンバーが自由に経験を共有できるオープンな環境を作ります。安心して話せる雰囲気が重要です。

3.    具体性を重視:

  • 経験を具体的に述べてもらうようにします。具体的な状況や行動、結果について詳細に語ってもらうことで、振り返りが深まります。この際に、感情についての表現が多くなる人には、行動について話してもらうように促しましょう。事実と感情を分けることで、状況がわかりやすくなります。

振り返り(Reflective Observation)のコツ

1.    感情に焦点を当てる:

  • 具体的な経験を言語化できた後に、その経験に対する感情を振り返ることは重要です。「その時どう感じましたか?」と問いかけ、感情の面からも振り返るようにします。

2.    成功と失敗の両面を探る:

  • 成功した点だけでなく、うまくいかなかった点や改善点も含めて振り返ります。「何がうまくいきましたか?うまくいかなかった点は何ですか?」とバランスよく質問します。

3.    第三者の視点を取り入れる:

  • 他のメンバーの視点やフィードバックを取り入れることで、新たな洞察が得られます。「他の人はどう感じたでしょうか?」や「この経験について他のメンバーはどう考えていますか?」と質問します。

抽象的概念化(Abstract Conceptualization)のコツ

  1. パターン認識:

    • 経験を振り返る中で、共通のパターンやテーマを見つけるよう促しましょう。「この経験から何度も見られる傾向やパターンは何か?」と質問するとよいです。

  2. メタ認知を促す:

    • 自分の考え方や行動について内省する機会を提供します。「この経験で認識が変わったことがありますか?自分の価値観や信念にどのように影響を与えましたか?」と問いかけることで、深い洞察を得ることができます。

  3. 理論やモデルに結びつける:

    • 学んだことを既存の理論やフレームワークと結びつけると理解が深まります。例えば、「この経験は、○○理論のどの部分に関連していますか?」と尋ねることで、抽象化が進みます。はじめのうちは「この経験は〇〇理論に当てはめるとこういうことかもしれないね」と情報を提供して、思考のサポートをしましょう。

能動的実験(Active Experimentation)のコツ

  1. 具体的なアクションプランの作成:

    • 学びを具体的な行動に結びつけるためのアクションプランを作成します。「次回、同じ状況に直面したら具体的にどう行動しますか?」と質問し、具体的なステップを考えさせます。

  2. フィードバックループの設定:

    • 実践後のフィードバックを重要視します。「このアクションプランを実施した結果、どのようなフィードバックを得ましたか?」と尋ね、次回の改善に繋げます。

  3. リソースとサポートの確認:

    • 実験を行うために必要なリソースやサポートを確認します。「このプランを実行するために、どのようなサポートが必要ですか?」と問い、実行可能性を高めます。

■終わりに

これまで、マネジメントといえば「自分のノウハウを、誰もが使えるように一般化する」「それをわかりやすく伝える」というのが基本だ、という考えが根強かったのではないかと思います。

でもそれだと「予習」しかできません。
ビジネスではとにかく行動した上で「復習」が大事だというのが、個人的な考えです。(もちろん初めての業務をするときはまとまったインプットは必要不可欠です。予習が不要ということが言いたいわけではありません)

とにかく経験をする。経験の中で考える。経験の後に考える。そして学びを抽出して次の手を考える。

その繰り返しが何より自身の成長には必要不可欠です。そしてこれは人に質問を投げかけてもらうことでより深い振り返りができるようになります。
成果につながる学びができる人を増やしていけるように(そして私たち自身もそうなれるように)お互いに頑張っていきましょう~。

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