足の裏に触れるもの


私は、足の感覚に異常なまでのこだわりを持っている。

この場合の足とは、足首から下にかけての部分。


足首から下に触れるものには、執拗なこだわりがある。

他の部位には何が触れようと、何の素材だろうと平気。

でも、足だけは無理だ。


私は靴下が苦手だ。

足が窒息するから。

靴を履いているときは、靴下を履ける。

でも、ひとたび靴を脱ぐと靴下を脱がずにはいられない。

座敷なんかでの会食は苦痛だ。

靴下を脱ぎたい衝動に駆られる。

靴下を脱いで、素足を畳にスーッと滑らせたい。


でもそれは叶わない。

大人の、もうすぐ三十路にも近づこうという女が、気兼ねなく裸足になって良い訳がない。

とにかくここはいつも我慢だ。


私はタイツが死ぬほど嫌い。

タイツやストッキングなんて、拷問だ。

もちろん履かなければならない場面は多々ある。

しかし、最大でも4時間程度が限界だ。

痒いし動きにくいし、圧迫感が強い。

何よりも「安易に脱げない」という状況が嫌で嫌でたまらない。


私がタイツの中に押し込められているなんて、あほらしいにも程がある。

だから私はできる限り、足首から下のないレギンスってやつを履く。

好んで履くわけではない。

しいて言うなら、レギンスだ。


女性は足を冷やしてはいけないと知っている。

あまりの寒さに、妥協せざるを得ないときもある。

そんなときは、レッグウォーマーとスリッパを履く。

とにかく、覆われているのが苦しいようだ。


シーツにも強いこだわりがある。

寝具のシーツは、足首から下が触れる。

安眠を確保するには、適切なシーツの素材でなければならない。

大好きなのは、綿。

それ以外は無理だ。

パイル地だとか、毛足の長いボアなんて最悪。

眠れるわけがない。


たまに義実家に行くと、パイル地やボアのシーツであることも多い。

おそらく、暖かい素材をとの思いから義母が用意してくれるもの。

そんなときは遠慮なくシーツをめくって、足を綿の布団とシーツの間に入れて寝るのだ。

こうしないと眠れない。

こうするのが好き、とも言えるかな。


素材だけではない。

公共の温泉施設やプールなどの床は、足裏を全部付けられない。

小指側に重心を取り、両サイドの辺を使って歩く。

汚いとか、冷たいとか、そういう理屈的な問題でもない。

我が家の床だって、大してキレイではないのだ。

なんとなく、信頼できない。

何が触れるか分からない。


このこだわりは、3歳の頃からずっと変わらず続いているもの。

小さなころ母に「タイツが嫌だ」と言って、くるぶしまでのタイツをせがんだことをよく覚えている。

足首のことろに、赤いワンピースを着た女の子が書いてある、白いタイツだ。

バレエを習っていたけど、タイツを履くのが嫌で嫌でたまらなかった。

バレエが嫌だと思うことは多かったのだけど、その理由はもしかしたらタイツだったかもしれないと、今になって少し強めに思う。


だから何だってわけではないけれど、二十数年間も同じことにこだわり続けているって、なんだか可笑しいなと思った。

別に不便はない。

足の裏へのこだわりについて悩んだこともない。


でも私はやっぱり、靴下とタイツ、パイルとボアのシーツが大嫌いだなぁと思う。

素足を冷たいフローリングに滑らせながら。




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