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デラウェアの記憶


食べものと記憶は密接に関係していると思う。
例えばびわを見て、小学生の頃、通学路にあった枇杷の木からかってにもぎって食べてたなぁとか。
豆腐を見て、友だちのAちゃんは豆腐は味がしないから嫌いだと言っていたなぁとか。
 
食べ物をみてはそれに関するプチ思い出がでてくる。

その記憶が呼び起こされるもののひとつにデラウェアがある。
わたしの中でデラウェアの食べ方はふた通りあった。口の手前でぷちっと、枝豆のように身を出して食べる方法と、皮ごと口に放り込み、舌で皮を剥いて取り出す方法だ。

皮ごと放り込んだほうが甘味がより味わえるが、人前で食べるときは少し恥ずかしい。
子どもながらに時と場合を考えて食べ比べていた。

そんなある日、テレビであたしンチのアニメを見ていたときだった。
みかん(長女)が一粒ずつ皮を剥いてお皿に集めていたのだ。
そしてそれをお父さんが一気喰い。
みかんが怒る。そんなシーンだった。

え?皮剥いてお皿に集めて一気喰い??
なにそれ?そんな食べ方あんの?絶対うまいやん!
と感動した。

さっそく次の機会に試してみた。
ホタテの貝殻の形をした白い小皿に、キラキラと黄緑の綺麗な粒がたまっていく。
あぁ、なんて贅沢な…。

ある程度溜まったところでお皿を掴んで一気に口に放り込んだ。
甘味と酸味が広がり、どこを噛んでも果汁がじゅわっと溢れ出す。

でも、なんか思ってたのと違うな。
もっと感動すると思ってたな。逆に虚しいな。
私にはひと粒ひと粒を味わっているほうが性に合う。

その日からデラウェアを見るとあたしンチのあのシーンが頭から離れない。
あたしンチ恐るべし……。
みかんに幸あれ(ややこしい)

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