相名 紬(あいな・つむぎ)

40代のママライター。福岡在住、地元の長崎と行き来しています。お酒大好き。好きな言葉は…

相名 紬(あいな・つむぎ)

40代のママライター。福岡在住、地元の長崎と行き来しています。お酒大好き。好きな言葉は「明日やろうはバカヤロウ」。クスッと笑えて、ほっこりする文章を書くことを目標としています。小学生の頃TVでイノッチを見てからずっとジャニーズ大好きです。現在snowmanを全力で箱推し中。

最近の記事

夏の幻

omoinotakeの、「夏の幻」を偶然聴きました。 サビの部分の 「あぁ君が今、どうか、同じ想いでいて」 という歌詞に、ノックアウトされました。 私には、二人の娘がいます。 長女は7歳。コロナ禍のせいで、 卒園式も、入学式も、 なんだか悪いことをしているかのような雰囲気の中で行われました。 誰とも近づけない。誰とも仲良くなれない。 そんな状況で、長女は登校拒否をしています。 そりゃそうだよな、と思います。 私は母として、長女の一番の理解者として、 と

    • 【フィクション】星空が映る海

      ずいぶん前の曲なのだけれど、昔から大好きだったドリカムの『星空が映る海』を今、頭の中でリピートさせている。 大学卒業後、今の会社で必死に働いた。なんだかこの仕事が天職のように思えて、10年が過ぎた頃には多くの後輩や部下を抱える役職までになっていた。 私は、日本人の父とウクライナ人の母の元に生まれたおかげで、手足は長く、小顔で、エクステいらずのまつ毛に恵まれた。見た目と反して日本語しか話せず(なんなら方言強め)、ガリ勉で真面目な性格ゆえに、仕事はちゃんと出来た。しかも容姿端

      • 【フィクション】惹かれるということ

        僕は、世の中的には「イケメン」だと思う。 幼い頃からモテていたし、バレンタインには食べきれないくらいのチョコレートをもらっていた。中学の頃には、僕のことで争う女子同士を見て困惑した。 僕はゲイだ。 きっかけは、先述した女子同士の辛辣な争いを目の当たりにした事だ、ということにしている。本当は、ある瞬間に目覚めた自分の性に驚き、何度も自身に問いただしたが、どうしても同性に意識が向いてしまうことに何か理由が欲しかった。 高校は男子校に進学した。初めて、両思いを経験した。不思

        • 【フィクション】眉間のシワ

          「可愛いなあ」「君が作る料理は美味しいなあ」「よく頑張ってるなあ」 この三つを言ってもらえさえすれば、幸せな1日を過ごせると思う。 しかし、私の希望は叶うどころか 「最近、眉間のシワがすごいよ」と言われてしまった。 実はこのセリフを数ヶ月前にも言われたことがあって、あまりのショックで、シワ用の化粧品を使ったり、ホルモンバランス的に情緒不安定なときには、美容クリニックを検索したりもした。 自分なりに努力してみたけれど、また同じことを言われてしまった。 彼と同棲を始め

          【フィクション:4】 幸せな夫婦

          私は幸せ者だ。 私には、付き合った頃から変わらず愛してくれる夫がいる。 夫は私のために一生懸命働き、戸建ての家をプレゼントしてくれた。 夫は私のために、宝石のようにキラキラした子供を二人も与えてくれた。 だから私は、とても幸せな女だ。 なのに私は、夫ではない男と恋愛をしている。 正直に言うと、 優しさ、愛情、容姿、真面目さ、 全てにおいて夫の方が勝っている。 私はなぜか、その男に夢中になっている。 男とは、会うたびに言い合いをしてしまうが 夫とは喧嘩をし

          【フィクション:4】 幸せな夫婦

          支え

          2020年5月。 みんなが、辛くてストレスフルな毎日を送っている。 家族全員の健康のため1日中家事をし続けるお母さん。 テレワークを余儀なくされ、子供に邪魔され妻には八つ当たりされるお父さん。 こんなにも良いお天気を窓越しに見ながら、ダラダラと過ごすしかない子供たち。 大好きな人に触れることが許されないカップル。 世界に自分だけしかいないような孤独に包まれる、一人暮らし。 前を向くために必要なもの。 それは心の支え。 例えばSNSで繋がるだけの、会ったことな

          【ノンフィクション】 いつかまた、きっと

          四月九日。 僕は来月で十四歳になるけれど、誕生日を迎える前に天国からお迎えが来そうだ。なんて冗談を言えるくらい心は元気、だけど体が全く動かない。「のうしゅよう」という病気だと、お医者さんが言っていた。僕はチワパピと呼ばれるミックス犬だ。尖った耳に長い鼻はお気に入り、太めの胴を頼りなく支える細い脚はあまり好きじゃないけれど、長くてフワフワな毛が体を隠しているから都合がいい。初対面の人から言われる「何犬ですか」は、「唯一無二の存在ですね」という褒め言葉なんだよ、とママは言ってい

          【ノンフィクション】 いつかまた、きっと

          【フィクション:3】じーこ編

          ※昨年からsnowmanの沼にハマっております。ハマりすぎて、メンバーを主人公にフィクションを書いてみたくなりました。感想お待ちしています! ・ 「おい、向井。今日の〇〇建設との会食、先方からお前のご指名が入ったぞ」「ホンマですか、部長!この前の会食、盛り上がりましたもんねぇ」 「お前は相手を楽しく酔わせる天才だからなぁ、本当助かってるよ。で、今晩行けるか?」「もちろんっ!部長にどこまでもついて行きます!」 ・ 「部長っ!今日も盛り上がりましたねぇ。ホンマお疲れ様で

          【フィクション:3】じーこ編

          【保護者代表の謝辞】長女の卒園式にて

          寒さの中にも、柔らかな春の日差しを感じられる頃となりました。昨今の厳しい状況の中、本日の卒園式の執り行いに関しましては、苦渋の決断であったと存じます。この場をお借りして、僭越ながら、園児たちの保護者を代表し、心よりお礼を申し上げます。    私の娘は、二歳児の七月に、◯◯保育園へ入園いたしました。途中入園だったこともあり、見学の際には緊張しながら授業を覗いていると、私と娘に気づいたクラスのお友達が次々と駆け寄ってきて、元気に挨拶をしてくれました。そのときの嬉しそうな娘の顔は

          【保護者代表の謝辞】長女の卒園式にて

          【コラム:1】 流行るということ

           ぐるなび総研が毎年発表している、日本の世相を反映し象徴する「今年の一皿」に、タピオカが選ばれました。ちなみに過去の受賞については、五年前の「おにぎらず」、三年前の「鶏むね肉料理」など、こちらも聞くと思わずあぁと声が出そうな、納得のものばかりです。    もはや知らない人はいないでしょうが、タピオカは、ツルっとしてモチっとした粒です。もう少し説明を加えると、キャッサバという芋科の根茎を原料とする、粘り気のある食材です。タピオカはグルテンフリーでヘルシーな上に、食感が強く腹持

          【コラム:1】 流行るということ

          【フィクション:2】 青春の匂い

          真っ暗で、ヒンヤリとした静寂。俺は今、お化け屋敷の中にいる。たった一人、懐中電灯を渡され、受付で「どうぞご無事で」と見送られ今に至る。言っておくが、俺はホラー系が苦手だ。こんなことになったのは、全て梓のせいだ。    梓は、大学のゼミ仲間の一人だ。明るく活発な性格で、サービス精神旺盛な彼女を、嫌う奴は一人もいない。実際俺も、嫌いじゃない。というか、彼女のことが大好きだ。サラサラのショートヘアーに化粧っ気のない彼女だが、なぜか女性らしい色気が漂っている。おそらく、いつもつけて

          【フィクション:2】 青春の匂い

          【書評:1】 西加奈子『きりこについて』

          「きりこは、ぶすである。」この一文から、作品は始まります。 主人公のきりこは、美男美女の両親から生まれ、愛情たっぷりに育てられます。パァパとマァマは、いつも「きりこはほんまに可愛い」と言うし、毎日フリフリのドレスを着せてもらっていたので、きりこも、自分は可愛いお姫様なのだと信じて疑いませんでした。 しかし、きりこは、ぶすでした。形容し難いほど、想像を絶するほど。 誰もがみんな、誰かの愛しい人として生まれてきます。その愛情を一身に受けて育ち、子どもの頃は全員が、自分は最高

          【書評:1】 西加奈子『きりこについて』

          【フィクション:1】 喜ばれる人生

           私が務める店は、表向きはオイルマッサージを謳っているが、二時間にしては高すぎる料金と男性専用という看板で、「そういう店」であると客に認知されている。私は風俗嬢だ。うちのシステムは少し変わっていて、前半の数十分は「本当の」マッサージをするよう義務付けられている。肩や腰、疲労している箇所をとにかく真剣にほぐすのだ。頃合いになると、客の方から「そろそろ」と言ってくるので、私は望み通りの奉仕をする。    「表向きだけのマッサージ屋はナンボでもある。うちは、体もアッチも満足できる

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          【エッセイ:3】 ウーちゃん

           月に一度、幼い二人の娘を連れて長崎の実家へ帰省している。帰り着くとまず、仏壇に線香をあげる。この香りを嗅ぐと、どこからか「おかえり。今月もみんな元気そうだね」という声が聞こえたような気になる。手を合わせながら、「おじいちゃん、来たよ」と祖父の写真に話しかける。そして祖父の周りに飾られた、歴代の我が家のペットたちの写真にも順番に挨拶をする。最後は、一年前に亡くなった猫のウーちゃん。「ただいま」と言いながら、私は写真を優しく撫でた。    ウーちゃんの本名は、魚と書いて(ウオ

          【エッセイ:3】 ウーちゃん

          【エッセイ:2】 温もり

                                            当時、私は五歳で妹は二歳でした。居酒屋を経営していた父は昼夜逆転の生活でしたので、一緒に出かけた記憶はありません。代わりに母が、あらゆる所に連れて行ってくれました。出かけるときは妹を乗せたベビーカーを母が押し、私はその横や後ろを歩きましたが、疲れたり妹が羨ましくなったときには、妹の上に覆いかぶさるように四つん這いにベビーカーに足をかけ、まるで雑技団のようにバランスを取りながら無理矢理乗ったりしました。  そ

          【エッセイ:2】 温もり

          【エッセイ:1】女子大生珍道中

          タイは、若いうちに行け。大学の授業を終え家路を急ぐ当時19歳の私に、ポスターの中からいしだ壱成が呼びかけてきた。 「夏休みに、ユウコとタイに行ってくるけん」と言った私に、母は目を丸くした。「人生初の海外やろ。危なくなかとね。タイのどこに行くと」心配する母に私はドヤ顔で「何も決めとらん。往復の航空券だけ持って、バックパッカーばしてくる。格好よかろうが」と言った。正気の沙汰ではない娘の言動に、母の顎が外れていた。   タイに到着したら、まず服を買うと決めていた。現地の人と同じ

          【エッセイ:1】女子大生珍道中