【フィクション:3】じーこ編
※昨年からsnowmanの沼にハマっております。ハマりすぎて、メンバーを主人公にフィクションを書いてみたくなりました。感想お待ちしています!
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「おい、向井。今日の〇〇建設との会食、先方からお前のご指名が入ったぞ」「ホンマですか、部長!この前の会食、盛り上がりましたもんねぇ」
「お前は相手を楽しく酔わせる天才だからなぁ、本当助かってるよ。で、今晩行けるか?」「もちろんっ!部長にどこまでもついて行きます!」
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「部長っ!今日も盛り上がりましたねぇ。ホンマお疲れ様でした!」「皆楽しそうだったな。お前のおかげだよ、また明日!」
部長がタクシーに乗って帰っていく。あぁ、今日も俺めっちゃ頑張ったわぁ。
大学卒業してこの会社で働き始めて、あっという間に3年が経った。賢いわけでも、仕事ができるわけでもない俺は、持ち前の明るさと訛ったままの関西弁という武器しか持ってへんかった。でも部長は、そんな俺を評価してくれて営業部に引き抜いてくれた。ホンマに、感謝しかない。
そう、感謝してるんやで。してるんやけどもね。
営業部、会食多すぎとちゃう!?俺、2日に1回は高級な店におる気がする。そやけど、部長のために場を盛り上げるのに必死でそない食べれへんし、食べても味ようわからんし。涙。
そんな毎日やから、一人のときは美味しくて元気が出るようなものが食べたい。もちろん、コンビニのご飯も美味しいで?スーパーのお惣菜も、買う頃には割引シールが貼ってあるから、嫌ではないねん。でも実家におる頃は、オカンの手作りご飯を当たり前に食べていた俺やから、なんかちょっと寂しいんよなぁ。
休日は、唯一の趣味である一眼レフを持って、近所を散策する。
半袖でも平気な季節になったなぁ。気持ちええから、いつもより遠くまで行ってみよかな。
【今日のおすすめ・青椒肉絲】の看板。少し足を伸ばした隣駅にある、テイクアウト専用の惣菜店だった。
青椒肉絲は俺にとっての「おふくろの味」。オカンが作ったヤツが大好きで、地元を離れてからも【青椒肉絲】という文字を見ると食べてみたなって、でも食べたらやっぱり少しがっかりすんねんな。それでも俺は、青椒肉絲を見つけると無条件に食べるようになっていた。
「いらっしゃいませ〜」レジにいた50代くらいのおばちゃんが元気に声を上げる。トングを持って、量り売り用の一番小さな容器に、青椒肉絲を食べたいだけ詰める。白ご飯は家にあるからこれだけでええねん。ちょっと恥ずいけど、それをレジに持っていった。
「青椒肉絲だけを買いに来てくれるなんて、娘が喜ぶわぁ。一番の自信作だから」レジのおばちゃんがそう言って、厨房で働く女性の方を向いた。
艶やかな長い黒髪を真ん中分けにして、それをキチンと束ねている。化粧っ気はない。なのに、なんやろ。美人やなぁ。あの人が作ってるんや。
それから色んな景色をカメラに収めて帰宅した。何だか今日は、いつもよりええ写真が撮れた気いする。何ていうか、色鮮やかやった。これで青椒肉絲が美味しかったら、最高の1日やな。
「いただきます!」
一口食べたら恋が始まるなんて、そのときの俺には知る由もなかったんや。
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