見出し画像

「がんと就労」と「アルムナイ」の共通点

フリーランスだった3年間、最初から最後までずっと携わっていたお仕事の一つが「がんアライ部」でした。

仕事とがん治療の両立ができる社会を目指す活動で、人事担当者向けに勉強会や交流会を行ったり、年に一度「がんアライアワード」という表彰及び表彰式を開催したりしています。

その中で関わった方々と連絡を取り合う中で、私が今やっている「アルムナイ」と「がんと就労」には共通点があることに気付きました。

アルムナイについての詳しい説明はこちらをご参照ください。

共通点1. イメージを変える必要がある

「がん」ってどんなイメージですか?身近にがんを経験した人がいない場合、怖い、即入院、壮絶な治療、余命数年など、とにかく大変で絶望的なイメージが強いのではないでしょうか。

かつて私自身そんなイメージが強くありましたし、がん治療をしながら仕事をするだなんて、そもそも発想にありませんでした。

ただ、実際にがんアライ部の活動を通じて知ったのは、「がん治療しながらでも働けるし、働きたい人がいる」ということ。周囲のイメージによる「がん=働けない」という決めつけが、仕事をしたいがん罹患者の方を苦しめるケースがあることを知りました。

※もちろん人によります。治療に専念せざるを得ない人もいますし、副作用で働ける状態にない人もいますし、働くにしても周囲の配慮は必要です。当然、働きたくない人もいます。

つまり「がん治療をしながら働ける社会」を実現するには、「がん=働けない」のイメージを変え、がん罹患者の周囲の意識や考え方をアップデートする必要があるわけです。

私が今取り組んでいる「アルムナイ(企業の退職者)」領域も同じく、そもそもの「退職者=裏切り者」のイメージを変えなければ、企業とアルムナイの関係性は成立しません。根底にあるイメージを更新する必要がある点が共通しています。

共通点2. 「想いがある人」が取り組みの起点になる

がんアライ部の活動を通じて、仕事と治療の両立ができる環境を整えようと奮闘する企業の方にたくさんお会いしてきました。各社の取り組みについて伺うと、多くの場合「想いがある人」が起点になっています。

自身ががんを経験した、身近な同僚ががんに罹患して課題を感じた、仕事とがん治療を両立する社員の姿を実際に見て感慨を受けた……など、何かしらがんと就労に取り組むきっかけとなった原体験を持っている。

がんへの対応で有名な伊藤忠商事さんやポーラさんもまた、代表の原体験がきっかけで取り組みがスタートしています。

現場のいち社員がきっかけとなり、ボトムアップで取り組みを進めた例もあります。むしろトップダウンよりもボトムアップで取り組みが始まるケースの方が多い印象です。

仕事とがん治療の両立への想いがある個人が立役者となり、少しずつ共感者を集めながら社内を巻き込み、小さく取り組み事例を作り、「がん=働けない」のイメージを変え、会社全体で取り組むまでに徐々に活動が大きくなり……がんアライアワード受賞企業には、そんな事例が多数ありました。

アルムナイに関する取り組みも、「想いがある人」が起点となって進むことがとても多いです。退職して縁が切れてしまう現状に課題を持っていたり、自社のこれからの組織の在り方を考える上で必要な考え方だと感じていたり。

「アルムナイとつながりたい」と思ってくれる人が各所に話をし、共感者を集め、小さく事例を作り、「退職者=裏切り者」のイメージを変え、社内を調整し……そうやってアルムナイ制度導入に至るケースは少なくありません。

アルムナイへの取り組みは、仕事とがんの両立支援以上に前例や事例が少ない分野。そんな中、長期にわたって動き続けられる根底には、やはり担当者の方に想いがあることが大きいように感じています。

以前取材した臨海セミナーさんも、アルムナイネットワークに関心を持ってから導入するまでに約4年がかかっていますが、その根底にあるのはやはり担当者の方の想いでした。

小島:私は入り口の採用を見ているからこそ、出口である退職に対して思うところがあって。欠員補充で採用をすることも多く、採用をしなくても回る会社にしたい想いがずっとありました。

でも、直接的に「退職を止める」ことにフォーカスするには、企業全体の仕組みや、考え方自体を変革する必要があります。自分の仕事の領域でできることを考えた時に、アルムナイだったら長年思い続けたこの課題へ、一石投じることができると思ったんです。

——『Rinkaiアルムナイ』が実現するまでの約3年半、途中で諦めなかったのにはそんな想いもあったのですね。

(アルムナビ『学習塾・臨海セミナーがアルムナイネットワークを発足「“共育”できる、新たな居場所をつくりたい」』より引用)

一方的に「働けない人」「裏切り者」扱いをする理不尽さ

「がんだけど、働けるし働きたい。でも、会社から働けない人扱いされてしまう」
「退職したけど前職のことは好き。でも、会社から裏切り者扱いされてしまう」

こういうのが私はどうも納得できなくて、働けるし働きたいなら病気であろうと無理のない働き方を共有して働いてもらえばいいし、会社を辞めても好きでいてくれるなら退職後も付き合いを続ければいい。

もちろん細かく見れば個別にそれぞれ事情はありますし、大手企業ほどそう簡単に物事が運ばないことも承知の上ですが、そんなシンプルな理屈が通らないことに理不尽さを感じてしまいます。

だからこそ、がんアライ部では「がん=働けない」を変えようとする活動に共感して3年間事務局をやっていましたし、今はハッカズークという会社で「退職者=裏切り者」の文化を変えるべく奮闘しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?