ごめんねという母の残像

私がフリーランス になったのをきっかけに墨絵や墨象画を始めた頃だった。

母が「ごめんね」とつぶやいた。

私の母は私に似てプライドだけは高く表面上は謝るという知性はあっても心から謝る姿というのはなかなか見れないと思っていた。

そんな母親がつぶやいたのだから私はちょっと驚いたのだった。

しかし私も母に似てプライドだけは高いので表面上はそのように驚いた風には出さない。

「何が?」

とだけ呟いて母の反応を見る。

「美大にいかせてあげられなかったこと」

幼少期から県知事賞など絵画や書の金賞以上をとるのは当たり前で、よくクラスにいる絵の上手な子というスタンスだった私は、美大に行くのが当たり前だと思ってたしずっと親に話していた。それが直前になって美大にはいかせられないと通達を受け、ショックに打ち拉がれたのが17歳あたりの頃だった。

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