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先生も、整形がしたい

一日に何度も、特定の集団からこんなに顔を見られる職業が他にあるだろうか。どこかのドラマや漫画のように、生徒に恋でもされてみろ。嫌でも授業中、じーっと顔を見られているわけだ。

誰だって、綺麗な顔でいたいだろう。誰だって、綺麗な顔を眺めていたいだろう。

美しい容姿をしている先生の授業と、年中ジャージで床屋にも滅多に行かない先生の授業、そのどちらの人気が高いかなんて、考えなくてもわかる。後者の人気が高いなんて、よっぽどのトーク力があるか、教材が面白いかだろう。

フケがたまった、数日髪を洗っていないのが明らかな先生の側になど寄りたくない。課題も出しに行きたくない。呼び出しも無視したくなる。
服装に無頓着な先生に、制服の指導などされたくない。ネクタイを締めろという前に、お前がスーツを着て来いである。

こまめに髪型を変える先生について、「今日○○先生、おだんご頭にして可愛かった」と生徒同士は絶えず報告し合っているし、アイシャドーを変えただけで気づいてくれるのは男ではなく一番はいつでも生徒だ。というくらい子どもはわたしたちの顔を見ている。

「美人は辛い」などと、時には世間で話題になることもあるが、それはもう、美しい先生の方が得である。イケメンの方が得である。

「生徒に惚れられて困るからあえてだらしない格好をしている」という教員。言い訳などしないで、素直に容姿を磨け。生徒に惚れられること、そんなのは他の方法で対処できるはずだ。性格と理性と責任の問題である。この職業は、子どもを預かり、学業に専念させるという責任がある。
「先生がいるから学校に行きたい」という、生徒が登校したくなる理由の一つになる方が、生徒の一生にいい影響を与えられる。

美しい顔をしていた方が、明るく華やかな容姿をしていた方が、よっぽど生徒は「なつく」「憧れてくる」「言うことを聞く」「授業に積極的になる」

だから、美しい顔でありたい。コンプレックスを抱えたまま、一生その顔をこれから出会う、何百人何千人の生徒に見せ続けるのか。

自信を持って教壇に立てるなら、整形もいいではないか。

このように語ったが、わたしは整形をしていない。
…していないと言ったら嘘になるかもしれないので、正直に話しておくと、歯のホワイトニングとほくろを取ることは経験したことがある。あまりお金持ちではないので、どちらも中途半端にしかしていないが。
あと、脱毛でデリケートゾーンの処理は済ませている(脱毛だけで別の記事を書きたいくらい、脱毛へのこだわりはある)。
これらが整形に該当するかはわからないが、美容にはそのあたりにお金をかけた。

教員は安月給なのだ。あまり大金を美容に投資できないところはある。本当はわたしだって、ヒアルロン酸を入れて目元を明るくしてみたい。貧乳として生きるのは飽きたので豊胸してみたい。整形が、もっとしたい。


教員が、堂々と整形に踏み出せない理由として、給料の低さ以外に、さらに二つの原因があるかもしれない。

一つは、毎日子どもと顔を合わすため、急に顔を変えることができない(ダウンタイムを取りにくい)ところがある。
しかし、これは「長期休暇」を利用すれば、ある意味、他の職業より整形をしやすい側面がある。例えば、夏休みだ。プールの指導や、補講などで忙しい先生もいるが、授業がないので長い休みを取りやすいのは確かである。整形するチャンスである。それを逃せば、毎日顔をのぞかれる日々である。時期を慎重に考えないといけないだろう。

もう一つ、何より整形をしにくい理由は、教育者特有の柔軟でない考え方だ。「ありのまま」「生まれたまま」を大切にしすぎる思想。「そのままのあなたでいいの」という考えは聞こえがいいが、それで苦しんでいることがあるとしたら、変えてもいいに決まっている。

一度、同僚が「まぶたの脂肪が重くて、常に眠そうに見られるのが悩みだ」という話題を振ってきた。他の同僚は、「自分もそう見られやすいから困っている」「そんなに眠そうに見えないよ」などと言う中、わたしは「整形すればいいじゃん」と言いかける。だが、それを否定されるような予感しかしなくて、その場ではその言葉は飲み込んだ。
言えばよかったかもしれないが、やはり今考えてもあの時の空気はわたしの発言により変わっただろう。もしその言葉を口に出しても、「その考えはなかったー」などと驚いてくれるわけでもない。「えー、整形はちょっとー」などと否定から入るのが想像できる。

教員の多くは、普段の服装が無頓着なところからして、整形に金をかけて何になる?と思っているだろうし、「ありのままの自分」「ナチュラルな自分」で勝負して、生きていける世界でしか生きてこなかったから、見た目重視な風潮を否定する。頑なに、「人は見た目ではない」と言い続ける。

SNOWをダウンロードして自撮りなども積極的にしないくせに、SNSで常に容姿を晒して承認欲求を満たしている子どもの気持ちがわかるのだろうか。マッチングアプリは、まず見た目で切られることを知っているのだろうか。自分の周りに人が集まるかどうかは、まず容姿であること。それが最優先でないにしても、その優先順位が上がっている世の中の流れを、わかっておくべきだ。たまには自撮りをしてみるといい。

「人は見た目じゃない、ハートだ」という先生。あなたのそのハートに憧れる子どもはいるのか。その押し付けのハートより、子どもはは単純に、可愛い先生の言うことをきく。
「最終的にはハートだ」ということは、もちろんわかる。自分のことを考えてくれる先生と考えてくれない先生のハート、それは子どもは見抜く。
ただ、最初っから嫌われにいく容姿をしていて、何がハートだよと、わたしは思う。

服装に無頓着でだらしない先生、セックスもしないから爪を切る頻度も低い清潔感のない先生、自分はブサイクだから恋人ができないと自虐ばかり言う先生、勉強の努力はしろというのに綺麗になる努力は一切しない先生…誰がそんなやつの言うことを心からきけると思うんだ。

ぱっちりと大きな瞳で話しかけてきた先生。その瞳が整形でつくられたものだとして、どうして非難する。自信に満ち溢れた明るい態度は、誰をも幸せにする。ニコニコと話しかけてくれる、その姿こそ生徒の目に、永遠に焼き付く。先生はいつも明るかったなという印象でいるほうがいい。

何だか急に綺麗になった先生がいてもいいではないかとも思う。新年度が始まるときに、あれ?去年と違って先生可愛いかも…と気づく生徒。

「先生、整形した?」

「気づいた?」

そんな会話が、学校生活であってもいい。大人の生き方の一つの例として、整形という手段があることを生徒は学べばいいのだ。(だが、いちいち話しかけられるのはうっとうしいので、たいていの場合は気づかれない程度に徐々に整形をするだろう)

もちろん、未成年の間に整形することを、勧めるわけでは決してない。未成年のうちは、自分の責任で何かを決断する能力が十分備わっているわけではないので、大人になるまでは十分考えさせるべきところではある。

だが、保護者の同意がある場合は、それをむやみに止めるわけにもいけない現状もある。
脱毛の話にはなってしまうが、「プールに入りたくない。自分の背中の毛が濃くて、水着になりたくない。脱毛したい」というJCJKはよくいて、親も脱毛サロンに行かせる場合が増えているという話を聞いた。筆者が通っているサロンで、セーラー服を着た少女と母親が奥の部屋にいて、契約書にサインする場面が見えたことがある。娘も、「毛が薄くなればプールに入れる」と思っているだろうし、親も「体毛の濃い娘にしてしまって申し訳ない」というコンプレックスを抱えているなら、両者早く解放されるのがいいはずである。


最後に、筆者の好きになれなかった言葉を紹介する。

「身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり」
(わが身体は両手・両足を始め毛髪・皮膚の一切に至るまで、すべて父母から戴いたものである。いわばわが身体は両親の遺体である。この大切な遺体を善く守ってわけもなくいため傷つけないように心がけるべきである。それが孝行の始めというものである。)
引用:web国語の窓【https://kokugonomado.meijishoin.co.jp/posts/949】

親からもらった身体を傷つけるのは、親孝行にならないという儒教の教えだが、「親からもらった身体に傷をつけてはならない」という真面目すぎる、昔すぎる考えに縛られて、コンプレックスを抱えたまま、それを気にしながら生きることの何が楽しいだろうか。(身体を危険にさらさず、健康を大切にするという解釈としては肯定すべきだが)
それよりも、「親からもらった身体でどう楽しく生きるか」が大切ではないだろうか。親を気にして好きなことができないよりも、変化する時代を生きること、自立すること、明るく過ごすことを、教員や周りの大人たちは教えていかなくてはいけない。

「整形する人」「整形しない人」それぞれが認められるべきで、教員は、整形する人を全否定する姿勢は決して持ってはいけない。異世界の人がすることと、身近に捉えないのもいけない。世の中に整形はありふれている。職員室で隣に座る先生も、知らぬ間に整形をしているかもしれないしそれは素敵だと心得よ。

もうちょっと身なりを気にして指導につとめよ、教員。


※今回の記事は、整形することのみを肯定する記事ではありません。「整形もいい」という考え方が広まればいいと思って書きました。
※校則や学校理念で、生徒へ整形の考えを持つことが禁止されていたり、教員の勤務規則を設けるところもあると思います。全ての教員に当てはまるように書いた記事ではないのでご理解ください。


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