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通過点#2

全摘から2年目、定期検査を受けた。

健側マンモグラフィ、視触診、ともに異常なし。
無事にクリア。

乳腺主治医との話の中で、大きなウエイトを占めたのはインプラントのこと。
全世界回収以降、再建を躊躇う方が増えたとうかがった。

「例のインプラントの件、やっぱり怖いよねえ。どうしようってなるよね。」
主治医はちょっと困ったような表情をして、こちらに問う。慮っていただいているのがとてもよくわかる。
「んー、ALCLになっちゃったら、それはもう論文にしていただきますかね!」
「え。」
主治医は苦笑しながら、下を向く。
「縁起でもないことをー。」
わたしはけろりとして続けた。
「実はそういう話、しているんですよ。」

再建の術式については、本当に細かい話をして決めたことだから、今更振り返って過剰に怖がっても仕方ない。
それでも心情的にどうしようもないなら、もしくはもっといい何かが収載されたなら、再手術を考えればいい。
もしもその前にリンパ腫になったなら、今後のためにデータをかたちにしてほしい。

決して軽く見ているわけではない。
形成主治医が「なにもないのが一番だけど、見つけるから!」と言ってくださった。乳腺主治医が「ずっと見ますよ」と言ってくださった。信頼あってのことだ。
希少がんで近しい人を亡くしたのもある。もしもそうなってしまったならば、寄与したい。
──正直、写真は少し嫌だけど。

そうやって覚悟しながら歩くと、わたしは決めた。

先々がどうなるかは、わからない。先々で抱える気持ちだって、わからない。
あるのは確率だけで、それがたまたま関係してくるのかこないのか、まだ誰もあずかり知らぬこと。

とりあえず、健側は無事だった。
全摘側の再発もなかった。

だから、いまは前を向く。
支えてくださるすべての人に感謝しながら、歩く。
ここは通過点。
 
 

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」