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Metamorphose

全摘手術後に愛用していたオーバーサイズシャツがすっかり色褪せてしまったけれど、「全摘手術後に愛用していた」という事実のためにすてられずにいた。
クローゼットの中、出番もないのにそこにある。

前開き、程良いボタンの大きさ、左右差をうまく隠してくれるシルエット。そして、少しこだわりのあるデザイン。大きめシルエットなのに漂う品の良さ。
求めていた条件にぴったりだった。
エキスパンダーの時も、インプラントにしてからも、本当に着やすかった。

この洋服をデザインした人は、別に病人を想定して線を引いたわけではないと思う。
それなのに、びっくりするほどしっくりきた。

ざくざくと切って雑巾のように扱うのも躊躇われた。
だって、それは思い出とともにあるものだから。

いま、マスクに仕立て直そうかと考えている。
手元に残り、またわたしを守ってくれるもの。
残りの布やボタンを使って、マスク入れのポーチを作るのもいいかも知れない。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」