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入院してみて、わかること。

ニュースやSNSを見ていて、ふと思ったことがある。
人通りがなかなか減らないとか、会食が云々とか、イベントがどうこうとか・・・・・・。

も、もしかして。

もしかして、病気やけがで入院の経験がある人って、少ない?

過去に片手では足りない回数の入退院を経験してきた「入退院マスター」(テキトーだし面白くもないし全然これっぽっちも嬉しくないな)のわたしからすると、入院リスクは全力で避けたい。
避けたくても避けられないことのほうが多分世の中には多いから、確率を出来るだけ下げておきたいのだ。

そんなわけで、複数回入院してみてわかったことを書いてみようと思う。

バンビちゃんになる

まず、体力問題。
今は昔と違って早期離床が勧められるので、手術後でも院内を歩くことに関しては、かなり早くからOKが出たりする。がんの手術のとき、あまりに早く独歩OKになりびっくりした。
勿論、これは伝染病などでの隔離を伴わない場合。

で、多少歩き回れる。体力的に大丈夫と思う?

バンビちゃんです。生まれたての。

身体の弱った部分を庇いながらの移動、楽じゃない。気を使いながらになる。
ベッドにいる時間も日常よりは多い。リハビリ以外では、負荷のかかる労作がない。すると、体力がめっきり落ちる。

退院後もすぐには体力が回復しない。正直、元通りは難しい場合もある。わたしもそう。
調子がよくないと、少し頑張っただけでぷるぷるしてしまう。
後遺症があるともっとつらいはず。いま流行りの感染症は呼吸器に後遺症が残ることがあると聞く。わたしはプロではないけれど、ヴェノーヴァやカズーを吹いたり歌をうたうのに支障があったら悲しくなるだろうな。

借りてきたネコになる

体調を崩す。お休みをもらう。
これは当たり前のことなのだけれど、やっぱり申し訳なさがいつまでもつきまとう。
とはいえ、いつまでもペコペコしていると、他の人が休みにくくなる。
この葛藤がなかなかキツい。本当はそんなことを考えずにいられるのが理想なのだろうけれど、休んだ期間の報告をしてもらうたび、ありがたさと共に心がキュッと音を立てて軋んだ。

学生時代の入院は長期の休みを利用したけれど、それでも課題が大変だった。勿論、その期間と退院後しばらくは、遊ぶなどもってのほかだった覚えがある。

ウラシマになる

テレビカードと雑誌と新聞、それにネットニュースとSNSを駆使しても、入院が10日を越えたあたりから浦島太郎みが拭えなくなる。

昼間のワイドショーでは、主要な話題は地上波キー各局同じようなネタが並ぶので、すぐに飽きてしまう。結果的に何故か海外事情やカルチャーに詳しくなり、不思議とテレショップ(主に独特の言い回し)が面白くなってくる。紀行番組は所謂神コンテンツだった。

で、そこから派手なネタに疎くなっていく。わたしの周りは元々あまりそういう話題が出ないけれど、お好きな向きは本当にウラシマになっちゃうのかな。

100均の店員さん状態になる

体力がなかなか戻らない、したがって気力が戻らない、そうなるともう

「そこになければないですね」

という気持ちになってくる。
でもここで自分を追い詰めてしまうと、心がつらくなる。ダメな日のダメな自分をいかに認めるか、みたいなちょっと変わったスキルが必要になってくる。
だから逆にいえば、そうなる前の段取りや、頼るところを用意しておくことも大事なのだ。面倒くさいが、それがないとなかなかに詰む。

むすびに

他にも色々あったような気がするし、身内の闘病を支える側から見えた景色はまた違う。この内容自体、n=1でしかないから誰にでもあてはまるわけなんてない。
とりあえず、自分の入院で見えたことだけをざっくり書いた。なお関わっていただいた主治医はじめ医療従事者のみなさんや、快くサポートしてくださったみなさんには、心の底から感謝している。ありがたかった。

段取りはどちらかといえば得意なはずなのに、思った以上に消耗したのは間違いない。どうか、これを読んでいる人にはお身体を大切にしてほしい。
 

【関連note】

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」