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SIMCITY at 下北沢ADRIFT

 昨日は下北沢のエンターテインメント・スペースADRIFTで、「SIMCITY presents 〜  FIVE NEW OLD × Deep Sea Diving Club 〜」を堪能した。

 下北線路街に位置するADRIFTは、2021年9月オープンというまだ新しい施設。下北沢駅から徒歩5分とアクセスもよく、目の前が商業施設という利便性の高い立地だ。

ADRIFT外観、シンプルで美しい

 はじめてのハコなので、小一時間ほど早く着いてからあたりを散策。ADRIFT前で近所の方だろうか、
 「今日は何かあるんですか?」
 と聞かれる。ライブの説明をすると、
 「あとで来てみようかな」
 ええ、これはいいメンツだと思いますよ。

前日の雪模様とうってかわってよく晴れた
夕方の日差しが美しく葉を照らして
目の前のカフェで、クロワッサンとこれを
小さめずっしりのドーナツは半分お持ち帰りに

 整理番号は70番台、キャパシティ300だが決して早くはない。背が低いので当然埋もれながら観るのだろうと思いきや、なんと2列目に。鳥飼さん側、ステージが近い。

 オープニングアクトはYAMORIさんから。グッドフィーリング。Human Beat Singerの肩書きどおり、歌とビートボックスどちらもリズムとグルーヴが心地いい。
 同じくオープニングアクトのUEBOさんを招き入れてコラボレーション曲「群像」を。最初に聴いたのはラジオだったろうか。明るくポップだが、地に足のついた率直な歌詞がリアルだ。生はその対比からの推進力がぐんと増すようで、とても良かった。
 ステージはUEBOさんへバトンタッチ。MCも歌も、客ノセもすこぶる上手い。さらにギターもいい。なにより声の響きがいい。ついほめちぎるくらい、いい。「めんどくさいや」が聴けたのはとても嬉しかった。もっと聴きたいと感じるステージ、まさか背面弾きパフォーマンスまで見られるとは思わなかった。熱い。

 場が充分にあたたまったところでDeep Sea Diving Clubが登場。ステージは予想外の「おやすみDaydream」でやわらかにその幕を開けた。
 続く「SARABA」のあと、この日発表があるという『お知らせのお知らせ』MCを挟んで「CITY FLIGHT」「Just Dance」へ。比較的FIVE NEW OLD(以下FiNO)のファン層が多めと思しきこの日のオーディエンスが、思い思い明らかに楽しそうに踊っている。きっとリスナーが増えるんだな、とちょっと嬉しくなる。
 ベースの効いたライブ定番の「フラッシュバック'82」、そしてこの日圧巻だったのが「cinematiclove」。熱量がすごかった。これまで生で聴いたいつよりも強く響く。「You can see the light」の絶唱が今も耳に残っている。
 そして5月メジャーデビューの発表。ついにこの日が来たか、と喜びに胸が熱くなった。
 昨年6月のWWWワンマン、トイズファクトリーからの祝花があるのを目にしてなんとなくぼんやりと予想はしていた。ただ予想していたものの、こんなに嬉しいことはそうそうない。

 いいバンド、いい曲はどこまでも羽ばたいてほしい。それがまた新しい試みに繋がる。たくさんの人に知られて評価されてほめちぎられて慈しまれて愛されて、そして誰かの笑顔になったり涙を拭ったりしながら日々の生活に溶け込んでほしい。
 そういう営みのすべてがわたしはとてつもなく大好きなのだ。
 夏の曲をやります、と前置きしての「フーリッシュサマー」でフロアの季節が夏へと巻き戻る。「Interlude(for Early Summer)」を挟んで、締めの「T.G.I.F.」へ。
 「平日に9時5時で働いている人たちがいるから僕らが音楽をできる。どちらがどうではなく隔てるものはない。選んだものが違っただけ、このステージの段差のようなもの。」というMCの後に聴く「祈るように繰り返してそれを形にする」のフレーズよ。メジャーに行こうがそのマインドが輝き続けるかぎり、この曲はあらゆる人の生活賛歌であり続けるだろう。
 
 トリはFiNO。「By Your Side」「What's Gonna Be?」でステージがはじまるやいなや、フロアが盛り上がるのを肌で感じる。流石の演奏力、そして歌唱力で魅了する。 「Liberty」から、ライブで聴いてみたかった「Happy Sad」へ。
 声出しが解禁となり、コールアンドレスポンスも出来るようになった。戸惑いながらも少しずつ戻ってくる日常と音楽。「P.O.M」「LNLY」「Fast Car」と進むたびに、フロアの一体感とうねりが増していく。それでいてオーディエンスは、決して羽目を外しすぎることはない。感染症禍でなくしたもの、得たもの、取り返していくもの。バンドの歴史がそうさせるのか、守るべきは守り楽しむことは楽しむという基本かついちばん大事なことをわかっている人たちだと思った。
 終盤「Don’t Be Someone Else」そして「Breathin’」で本編に幕。アンコール「Gotta Find A Light」が胸にしみた。
 FiNOがMCでO.A.を褒め、Deep Sea Diving Club g.&vo.谷さんがFiNOのライブに通っていたエピソードを明かす。リスペクトとフックアップ、ミュージシャンシップ溢れるいい対バンだった。それは会場に伝わっていたようで、FiNOのファンが
 「さっきのバンド、大切な発表があるならトリでも良かったのに」
 と話す声も耳にした。雪解け後のあたたかさのように、この日の陽気のように、心がぽかぽかとする素敵な夜。こういう満ち満ちた日があるからこそ、平凡な日常は輝いていける。きっと。
 

 余談その1
 Deep Sea Diving Clubのステージでギタートラブルが発生。この時のMC繋ぎが上手く、ああこの人たちはラジオでトークの経験を積んできたもの⋯⋯と感じ入ってしまった。あの急場でフリートーク、会場の男女比を見たのか咄嗟に料理ネタで引きつける出原さんの機転に拍手。
 「機材トラブルに強いバンド」うん、とてもすてきだ。

余談その2
 多分UEBOさんの時だ、DSDCの谷さんがステージ脇からひょっこり顔を出して観ていたのがなんだか非常に楽しかった。
 SEA SIDE PARTY福岡編も楽しかっただろうな。どこでもドアとタイムマシンの開発はまだだろうか、荒唐無稽な未来を待ち望んでいる。

余談その3
 冒頭で書いたように街の人に声を掛けられたのだが、FiNOのHIROSHIさんご本人もカップルから声を掛けられて2人動員してきたとMCで話していたのが大変ツボ。マネーガッポリポーズがきまっていた、あのカップル絶対いい思い出になっただろうな。
 開場前、ぼんやり立っていたらWATARUさんが脇をトコトコ歩いて行かれたのでびっくり。

大井ちゃんセトリありがとうございました!
終演後、写真を撮ったり語り合う人が多く
ここでもあたたかさを感じた


なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」