善意とデマとド素人(2)
予感は的中した。
患者が不安から色々呟くのは、当たり前といえば当たり前だと思う。
そうしたアカウントには、情報はFDAなどの公的機関を見て、必要に応じ主治医に相談するように伝えた。国内初症例が出た時も、同じようにしていたのだ。
関連学会の発表が遅いと憤る人もよく見掛けた。
だがあまりに展開が早かったのだ。
医師だって情報収集中だとは思った。だが、その人の身体について一番よくわかっていて相談すべき存在であるのは、まず主治医だと信じている。
当時繰り返した呼び掛け。弱小辺境アカウントに拡散力などないが、強い危機感で動いていた。
だがまずいことに、以前「胸がリコールされた話」でも触れたが、複数の医療関係者までもが不正確な情報をツイートし始めた。
技師を名乗る人、看護士を名乗る人。前回は「見た人の不安を煽らないように」敢えて触れなかったが、中には医師を名乗るアカウントもあった。
勿論、それは「自称」かも知れない。
しかし、自称かどうか確実に確かめる術が、果たしてあるのだろうか?
肩書きは強い。本当に正しく見えてしまう。
予め情報のリンクをまとめてツイートしておいたのは、正解だった。
わたしは意を決して、不正確なツイートをする「医療関係者」にリプライしはじめた。
◇ ◇ ◇
わたしは医療に関してはド素人だ。
Twitterのプロフィールを見ても、立ち位置が患者であることがわかるはずだ。
だから、鼻で嗤われることくらいは覚悟の上だった。丁寧に、できる限りシンプルな言葉で、話そう。対立構造を生まないように。
技師を名乗る人は、全世界の死亡者数を実際の11分の1である3人(当時)とした上で、「患者さんがかわいそう」と記していた。そんな僅かな死者数で回収する必要があるのか、と。
可哀想だと本当に思うならば、せめて調べて正しい情報を書いてくれればいいのに、と思った。
勿論ただのツイートだから、その義務はない。
義務はないけれど、検索で行き着いた人には「医療関係者が書いた医療情報」なのだ。
それに、その「数」はひとりひとりの人、命だ。亡くなってはいないが闘病中の人は、もっとたくさんいる。ぐっと心を抑えて、記載の誤りを伝えた。
「医療のセミナーで聞いたから正しい」
それがその人の回答だった。
途方に暮れた。暮れていても仕方ないので、各国の学会と報道を情報ソースにしている旨を伝えた。
ブロックされた。
(つづく)
関連noteは下記リンク、ならびにマガジン「胸がリコールされた話」です。無料。
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」