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ONLINEがラインを超えるとき

 素晴らしいライヴをみた。

 無観客配信ライヴ、channel 02。SIRUPの公演だ。
 実はこのライヴは12月17日(木)に開催予定だったものの、本人の体調不良により中止になっていた。いわば仕切り直しだ。 
 会えない時間が愛育てる──とはわたしも生まれる前の相当古いヒットソングだが、12月から3月へと開催が変更になる中で、より期待が増していたのは事実。

 POPS研究会(starRoの別名義)によるオープニングアクトで早くもチャット欄が熱狂に酔いしれる。揺れるフロアがまるでここにあるかのようだ。
  
 ボルテージが上がったまま登場したSIRUPは、SIY stageで変幻自在の魅力を存分に撒き散らす。それはあたかも豪華音楽特番のようなスタジオ渡り歩き的演出であり、また生でつくられていくMVのようでもあり、クラブであり画面の枠をこえたランウェイでもあり、紛れもなくライヴそのものだった。SIRUPの冴え渡るボーカルが、GANMIのダンスが、そして演奏が躍動を剥き出しで伝えてくる。
 そのあまりの鮮やかさ、巧みさに度肝を抜かれる。初っ端からこれか。ちょっと凄すぎやしないか。舞台監督は誰だ、いやそんなことはもういい、どうしたって身体はただ揺れてしまう。圧倒的なパフォーマンスが、心と思考を捉えて離さない。

 引き続きバンドが待つステージに移動すると、そこで繰り広げられるのは圧巻のショーだった。
 極上のリズム、グルーヴ、はじけては空気を震わせる声の艶やかなさま。膨張し続ける多幸感、うねりすら感じるチャットのレスポンス。
 コロナ禍を契機に生まれたメッセージ性豊かな「HOPELESS ROMANTIC」「Online feat. ROMderful」の2曲に続き、ゲストを迎え入れてのコラボレーションコーナー。RUNG HYANGとしっとり歌い上げた「Low Key」、そしてSoulflex/PEARL CENTERの「Mixed Emotions」。後者は配信だからこそ実現した、多人数同時パフォーマンスだった。メインステージと特設ステージ、場を広く使っても画面分割で一画面におさめられる。

 ラストナンバー「Thinkin about us」前のMCで彼は語った。
 誰か、他人について考えることは、自分に向き合うことに近い。それはみんなに繋がっていく。
 さらに続ける。簡単な言葉で繋がろうとしない。同じところを見つけるのは簡単だが、違いを認め合っていくことが大切なのだと。
 安定感に満ち溢れたSIRUPのヴォーカルが、微かに揺らいだ。その揺らぎ、僅かに掠れながら一層熱を帯びた声の、なんと雄弁なことか。

 極めて「ライヴ」なのだ、これは。オンラインだとかオフラインだとかいう呼び名は全くどうでもいい。オンラインだと音圧がね、なんてしたり顔は要らない。ならばスピーカーを繋いで、「2021春のいま」に抵抗すればいい。
 これは配信の可能性を最大限に拡張し、配信だからこそできる演出とライブ感、そして「これまで音楽と映像が織りなしてきたシナジー」をミクスチャーした、新たな可能性のステージなのだ。ここには豊かなメッセージがあり、画面を突き抜ける熱量がある。

 channel 02以前/以後という文脈すら生まれるかもしれない。この夜のSIRUPは、そしてその仲間たちは、鮮やかにラインを越えて見せた。
 これはひとつの福音であり、衝撃。総合芸術の域に触れる、素晴らしい公演だった。


【出演】

SIRUP

GANMI
showmore
Shin Sakiura
Soulflex
POPS研究会(starRo)
PEARL CENTER
RUNG HYANG

【セットリスト】

Why Can’t
Need You Bad
Light
MAIGO feat.Joe Heartz with GANMI
Ready For You
Your Love
PRAYER
Pool
Synapse
バンドエイド
No Stress
LOOP
SWIM
Do Well
HOPELESS ROMANTIC
Online feat. ROMderful
Low Key with RUNG HYANG
Mixed Emotions with Soulflex/PEARL CENTER
Trigger
Thinkin about us


当記事のトップバナーはみんなのフォトギャラリーよりお借りしています。
アーカイヴ期間終了につき、本文とセットリストを加筆しました。

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このラインナップでアーカイヴつきチケット2000円台っておかしいでしょ・・・・・・。
 


なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」