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明日を縫う
母さんが夜なべをして手袋を編む時代が終わったと思っていたら、母さんが夜なべをしてマスクを縫う時代がやってきてしまったようだ。
というか、父さんでも爺さんでも婆さんでも、時は群雄割拠・・・・・・違う、腕に覚えのある強者がみんな縫う。
会社も個人も縫う。誰かのために。
Twitterに溢れる手づくりマスク。どれもみんないい。
フィルターとなりうる素材の通気性、防湿性、布目の大きさなどを調べていくうちに眠くなったりしながら、明日を思って縫う。
または、本当に高性能なものを使わなければならない誰かのことを考えながら、縫う。
揺れるエビデンス、許すナラティブ。
思惑と困惑と思いやりと。
そうして運んだひと針を、どうして無碍に嗤えようか。
緊急事態宣言がテレビから流れる。しかし手のひらの針は進む。ひと針ひと針、少しずつ。
マスクというかたちの明日を縫う。
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「それ、効かないよ」
布マスクについてそう断じられていようと、「より効果が高いサージカルマスクは国が買い上げて医療の現場を優先する」というニュースが流れても殆ど場が荒れない。
「飛沫で他人を感染させないためには有効」
僅かな期間での方向転換。
するとみんな工夫して用意しはじめる。誰かのためになる、それを理由として。
これって、本当は素晴らしいこと。
小さな包み布の中で、色々な言葉や考えていることがあっても、ちゃんと飲み込む。
いいね。
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」