見出し画像

病める活字中毒、走る。

これは活字中毒ならではの、おそらく奇特な情報収集の記録になる。

きっかけはBIA-ALCLについての海外報道だ。

乳がん→確定ならば全摘もあり得る→としたら?
それを選択するかどうかは別として、メリットデメリットをはかるため、当然の如く乳房再建について調べる。
人工物、つまりインプラントによる再建と自家組織による再建がある。
インプラントとは?
日本で保険収載はなんと一社しかない!
というわけで、一度通読したアラガン社の乳房再建情報Webサイトをもう一度読む。
社名と製品で調べ・・・・・・海外で報道がある?

ここではたと思い出す。
わたし、これ読んだぞ。発がん性のアレだ。

医療情報は自分に関係あろうがなかろうが手当たり次第に読むたちだが、これは明確に読んでいた。がんサバイバーが身の回りに多く、がん情報を日頃から読み込んでいたことに加え、かつて親しい人が全摘したからだ。その話を聞いたのがきっかけで、病についての理解を深めようと調べて行き当たった情報のひとつだった。

思い出しはじめると芋づる式。仏PIP社の、未承認の工業用シリコンを使っていたインプラントスキャンダル。アメリカでもあったな。そうだ、フランスで抜去を含む全回収、あの時入れ替えに用いられたのは?

まず安全性情報の通読と、海外報道のおさらい。検索すると英語仏語で出るわ出るわ。
そこから今回見たテクスチャードインプラントの報道へ。
そしてICIJから、ANSM、FDAへと。

こうなるともう止まらない。海外の研究、リリース、そして報道を手当たり次第に読み漁った。
アメリカ、フランス、ドイツ、オーストラリア、確かスペインも読んだと思う。
インプラントの構造、形状、他社製品との特徴の違い、補償の有無。有力な説とそれ以外、訴訟の動き。インプラントをめぐるこれまでの歴史。BIA-ALCLを発病した女性のインタビューも読んだ。

読みながら資料として保存。PDFを保存するフォルダは、あっという間にこの話題で埋め尽くされていった。
残念なことにスマートフォンの故障で、今はオフライン閲覧がかなわなくなったものが殆ど。でも情報は頭に残った。

一方、日本の情報は少なかった。これは当時、BIA-ALCLの患者が国内にいなかったからではないか。

医師にリスクを説明される前に、組織染色の画像を見る患者がどれほどいるだろうか。思い詰めていたわけではなく知識欲からではあるが、明らかにやりすぎだ。一歩間違えば情報オーバーフローにより混乱をきたす。今思えば、の話にはなるが。

公的な情報や報道に絞っていなければ、トンデモ理論を辟易しながら読んでいたかも知れない。仕事柄、数多の情報から欲しいものだけを抽出するスキルがあって、心から良かったと思う。

手持ちのカード・・・・・・ならぬ情報を並べて比較検討していたことで、考える時間はふんだんに確保できた。

なおこの場合の「考える」は、医師への質問を脳内でじっくり練り上げ纏めることを言う。こうしてネット空間を走り回った結果、何故か突っ込んだ質問をする謎の患者が出来上がったのだ。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」