がんサバイバー、前夜
巷に溢れている体験談は、「どこからどう見ても本当に大変な方」が多い。
わたしは乳がんの告知を受けたが、DCISという非常に初期のがん。ステージでいうと、Ⅰ期より前の0期だ。
DCISの病巣はしこりをつくらない。自ら触ろうと、医師が触診しようと、しこりを触れないのだ。こういうがんは、セルフチェックで見つからない上に、話題にもなりにくいと思う。
でも、全摘。
誤解を招きたくないので説明すると、小さいDCISでは部分切除になる。わたしはがんの範囲が広かったのだ。乳管内を広がっていき、確定診断の時点で6cmにもなっていた。
では異変はなかったかというと、実はあった。
食欲不振。今までどんなに食べても全く太らなかったのに、ろくに食べなくても太る。浮腫む。息苦しさ。足が常に重く、歩くことすら怠い。ショッピング中にガラスに映った歩き方は、まるで老婆のようだった。そして、毎夜繰り返される微熱。
加齢のせいだ、太ったからだ、周りはそう言い笑いのネタにまでした。
流石にこれはおかしい。そう思い、原因を求めて複数の医療機関を受診したこともあるが、はっきりとはしなかった。
だがどうだろう。
がんを切ったら、痩せた。息苦しさももうない。スタスタ歩ける。勿論、これらが乳がんによる症状かどうかはわからない。こと超初期のがんだけに。
身体がサインを出していたのかもしれない。
残念ながらわたしはポンコツピッチャーなので、なかなかそのサインに気付けなかった。そして、業を煮やして検診のマンモグラフィーが教えてくれた。
痛いから嫌だ、という声もよく聞くマンモグラフィー。でも、わたしのがんはマンモグラフィーでしか見つからないタイプのもの。
あのままだったら・・・・・・と思うと流石にゾッとするのだ。老婆のように歩くには、まだ早い。
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」