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困ったときはいつでも言ください、の裏側

 その方は「困ったときはいつでも言ってくださいね」と最初の頃に私に言いました。それなのに、その2年後、突然その方は突然去って行きました。まだ私は困っていた状態だったので、そのとき取り残された気分になりました。その方のことを信頼し、毎回会う時間を楽しみにしていました。その方がそのとき言ったおもしろいセリフや名言をノートに書いておき、会わないときも、ときどきそれを見返すことで、励まされていたことを覚えています。

 落ち込んだとき、そのセリフや名言をパラパラと見返すと、心が軽くなりました。なんとかしんどい日常をそうこうして進んで、ここまでやって来ることができました。あのときの私にとって必要な存在の一人で、その方がなんとなく放つ言葉は、私の心に毎回刺さり、心の栄養となっていました。

 それなのに、その方は急に私の前から去り、連絡も途絶え、顔も見ることも、もう話すこともなくなりました。「あのときのあの言葉はなんだったのだろう」と私は裏切られた気が残りました。急に去られ、本当に困ったときに、その方は結局何もできなかったというような気持ちがそのときは残りました。それからしばらくして私は思いました。その方は、もしかしたらあのとき、私以上に深刻な闇を抱えていたのかもしれない、と。

 これは私がこれまで出会った人たちの割合でのことですが、闇の深い人ほど、笑いのセンスがあるおもしろい人間が多い気がしています。それぞれのしんどい日常を、どうにかおもしろくならないものかという心境で日常を過ごし、そんな自分を紛らわすかのように、瞬間的で意図的に、おもしろおかしくできるようにそのときを生きているのかもしれません。そんな生き様をしている友人や家族が私の身近にもいました。(もしかしたら、私もその一人なのかもしれませんが)一緒にふざけてくれる人、一緒に困ってくれる人に今後も出会いたいです。そして、「困ったときは、いつでも言ってくださいね」ということは、もう言わなくていいです。一緒にふざけて、一緒に困りましょう。

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