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帰りに行く旅

この3年ほど、年に1回以上は関西に行く機会がある。仕事もプライベートも関西には何かと縁がある。

社会人になってある程度収入を得て、行動範囲が数千km広がった。近場にはないもの、近場ではできない体験に対して諦めることをしなくなって、軽率に飛行機に乗るようになった。
新千歳空港から関西まで約2時間半。前後の移動も含めたら、自宅から目的地まで最低でも5時間はかかる。

それでも行く。行く理由がある。
元々苦ではなかった5時間超の移動も、現地で道に迷うのも、ひたすら遊んだ翌日の早起きも、旅の価値が希少になった今、さらに愛しいものになった。

2022.3.12/フレデリック Home Party Tour 2022
@大阪・梅田クラブクアトロ 

旅から話したくなるライブの話を。


この日最初の楽しみは飛行機でWanderlustを聴くこと。

離陸の少し前に再生したら、
《蕩々と いつだって想像を》
で一気に加速して、サビに入って離陸。

我ながらタイミングが良すぎて私の視界がMV。

やっぱり曲のワクワク感が旅にぴったりで、その後も機内で10回くらい聴いた。これから先、飛行機に乗る時はWanderlustを聴くのが定番になりそう。

しばしの間雪とおさらば


関西空港に着いて、飛行機を降りたら暖房のような温風。少し歩いただけで汗ばむ気温。

本当に3月?????夏では????????

スニーカーで外を歩けるし花は咲いてるし木には葉っぱも付いてる。感動。


ホテルに荷物と上着を置いて友人と合流。
ライブ前に、ずっと行きたかった場所に行った。

阪急中津駅。FCコンテンツで健司さんの思い出の場所として紹介されている。

梅田から1駅とは思えないくらい静かで落ち着く雰囲気の場所。

峠の幽霊のMVに出てくる公園。広場や遊具は子どもたちや家族連れで賑わっていて、その平和な光景が美しかった。

フレデリックが結成後初めてライブをしたというライブハウス。

当時のことは分からないけど、フレデリックがこの場所から始まって、初めてのFCツアーがこの街から始まることを思うと胸が熱くなった。

ライブのMCで、この日がインディーズ盤ミニアルバム「うちゅうにむちゅう」のリリース日だったことも知った。偶然とはいえ、たくさんの思い出が詰まった日と場所に運命を感じずにはいられない。



初めてのクラブクアトロ。今まで行ったライブハウスの中で一番小さい気がする。
ステージの機材や配線が剥き出しになっているのが無骨で格好良い。ストロボの光が鋭くて好き。ライブの演出に興味を持つきっかけになった、高校の学校祭のステージを思い出す。



初めて生で聴く曲がほとんどで、終始声にならない息が漏れたり息を吸ったりしていた。
バジルの宴、LIGHT、終わらないMUSIC。開催の頃はまだここまで好きになっていなかった横浜アリーナ公演、その時に披露された曲も多くて嬉しかった。映像で観るアリーナと生で観るライブハウスとで印象がかなり変わってくる。


メンバーも言っていた会場の独特の雰囲気は、ここにいる人みんながどの曲も身体に馴染んでいて、それぞれの思いを持って聴いていたからなのかもしれない。

私も思うままに身体を揺らしてみたり目を閉じて聴き入ってみたり、普段よりもリラックスして楽しむことができた。

LIGHTとWanderlustの、軽快なダンスナンバーでありながら見えないものに対する優しさと強い思いが表れた歌詞に共通点を感じる2曲、SPAM生活とTOMOSHI BEATという新旧の代表曲2曲を続けて披露した流れが特に好き。
LIGHTはリクエスト投票で迷ってやめた1曲でもあったから、生で聴けて本当に嬉しかった。シンベのLIGHTもすごく良い。


MCもいつも以上にゆるゆるで、メンバーもリラックスしているのが伝わってきた。暗転せずに転換の様子が見れたのも貴重。
スタジオ感や普段のライブにはないような企画にFスタっぽさも感じた。


「失ったものを歌った曲」という初披露のYOU RAY。

この曲を聴いて思い浮かんだのは、去年中止になった地元の夏フェスの日のことだった。
子どもの頃から馴染みのある会場。ロックバンドの、フェスの楽しさを知った場所でもあった。
フレデリックが出演することが決まってすごく嬉しくて、チケットを取ってずっと心の支えにしていたその日は、結局叶わずに過ぎてしまった。

開催予定だった当日は気持ちの良いフェス日和だった。私はタイムテーブルに沿って家でずっと音楽を聴いていた。
夕方になって、急に雨が降り出した。10分くらいの通り雨で、止んだ頃に大きな夕日が顔を出した。
最高のシチュエーションだった。フェスの幸せを全部詰め込んだような景色があまりにも皮肉だった。

もう半年も前のことなのに、喪失感や未練は残ったままだったみたいだ。

YOU RAYは失った悲しみと決別するわけでもなく昇華させるわけでもなく、ただ受け入れる、そんな曲だった。未練は未練のままでいて良いと思えた。
音源で繰り返し聴いたら印象も変わってくるかもしれないけど、この先もずっとあの夕日を思い出すのだろう。


そして初披露とは思えないくらい一体感があったジャンキー。
音源よりも主張強めなビブラスラップが好き。
私も他のお客さんもこの曲を待っていた!って気持ちが溢れすぎて、笑っちゃうくらい綺麗に揃うクラップ。最高。


ずっとあったかくて居心地が良くて、まさに家だった。Home Party Tourはライブに「帰る」と言いたくなる。
でも遠征だから、「帰りに行く」。対になる言葉同士だけどこれがしっくりくる。
何度でも帰りに行きたい場所ができた。


翌日、空港に行くまでに時間があったので少し寄り道をした。

そういえば初めてライブで遠征をしたのも大阪だったなと思い、当時泊まった辺りを散歩してみた。梅田ダンジョンはまだ一人では歩けないけど、大阪のだいたいの地理がぼんやり分かるくらいにはなった。

帰りの飛行機もWanderlustと一緒に。北海道の2℃の風にやっぱりこれが3月だよねって思う。でも春は近い。



良い旅だった。自分に厳しくしながら、制約の中で楽しむことがこれまでよりも自然にできるようになってきた気がする。

Home Party Tourはこのタイミングだったからこそ参加できたというところもある。いろんな偶然が重なって出会えたバンドだから、今展開されているものをリアルタイムで追えるのが何よりも嬉しい。

どんな状況でも、自分なりの楽しみ方を見つけて選択していくことはこの家の人が教えてくれた。
帰りに行く場所を作ってくれてありがとう。


これからも人生を楽しい方へと向けて。