見出し画像

イタリアのストーンヘンジ⁉神秘的な環状列石。

イタリア中部トスカーナ州南部、ラッツィオ州との州境い近くのPoggio Rota(輪の丘)と呼ばれる小高い起伏の上に10の巨石からなる環状列石がそびえ立ちます。2004年に、この地域のエトルリア研究をされていたジョヴァンニ・フェオ氏によって発見されました。

紀元前2700年から2300年につくられと考えられているこの環状列石は、ひとつの大きな凝灰岩のブロックに上から切り込みを入りてつくられました。3メートルほどの高さの巨石が5つ円形をなして並んでいて、その外側に半分ほどの高さの巨石が5つ配置されていますが、土に埋もれている部分を足すと高さは、6メートルほどになると考えられています。

イタリア中部にエトルリア人が文明を繁栄させるずっと前のこの時代、この地域には、現在、リナルドネ文化(紀元前4000年から2000年、銅器時代)と呼ばれる文明がありました。リナルドネとは、最初にネクロポリスが発見された場所の地名です。

リナルドネ文化を築いた人々は、紀元前4000年頃、おそらくアナトリア地方からティレニア海岸に到着し、鉄や銅、辰砂の豊かな鉱床に魅かれ、川を遡り、この地域に住み着きました。そして少しずつ大地と聖なる関係を築いていったのです。

リナルドネ文化の特徴は、死者信仰で町の外に大きなネクロポリスをつくりました。(現在、ネクロポリスは発見されていますが、町の遺跡はまだ発見されていません。)水や星、大地母神を崇拝していたため、凝灰岩を彫ってつくられた巨石祭壇や天文台、地下道、メンヒル、土まんじゅうが各地でみつかっています。

この環状列石をつくった人々は、ティレニア海からフィオラ川を遡り、この場所に住み着き、適当にこの場所を選び、適当に岩を削ったわけではないのです。

この場所の真北には、この地方一帯では一番高い山アミアタ火山(1734m)があります。最後に噴火したのは18万年前で、エトルリア時代にはに主男神ティニア(ローマ神話の最高神ユーピテルにあたる)の住処と信じられていました。リナルドネ文化時代もやはり聖なる山と考えられていたに違いありません。そして、夜になると北の水平線上、アミアタ山の二つの山頂をつなぐ尾根の上に当時の北極星であった「りゅう座アルファ星(Thuban)」が輝いていました。

この写真では木が邪魔してうつっていませんが
巨岩の裂け目からはアミアタ山が見え、夜になると北極星が輝くのを見ることができました。

また、巨岩と巨岩の間からは、夏至、冬至など一年の間の重要な日の日の出、日の入りは、まっすぐに太陽光が入り、円の中心を通るようになっています。そして、そのような日には、この地点からみれば、二つの山頂の間のくぼみから太陽が昇ったり、沈んだりします。二つの山頂で描かれる稜線は、女性の胸のようにも見えます。母なる大地から生まれる太陽、そして再び生まれるために母なる大地に沈む太陽をみつめながら強いエネルギーを得ていたのでしょうか。

外側にある巨石の一つは、水が溜まるように彫られています。真っ暗な夜にはこの水の表面に写し出される星を観察することができました。また、水は火、空気(風)、土とともに四大元素の一つであったため、祭礼に使われていたのかもしれません。

上部に鋭角の切り取りのある巨石もあります。日時計の役割をしていたのではないかと言われています。

また、浸食を受けやすい凝灰岩ですが、専門家によると表面にあるたくさんのくぼみは自然にできたものもあれば、人の手によってつくられたものもあるようです。

このように、4000年以上も前に、季節のうつりかわりをはかる天文台として使われていただけではなく、自然崇拝の祭祀場として使われていたであろう環状列石。謎なこともまだまだ多く、とても興味深いのですが、現在は自然に浸食されるまま放置されており、この巨石群にたどり着くためにも道なき山を木を伝えながら登っていきました。

リナルドネ文化が起こってから2000年後におそらく同じアナトリア地方、エーゲ海から到着したと思われるエトルリア人は、すでにこの地方に同じような文明があったことに驚いたことと思います。が、大地母神を崇拝していた両文明、男性性の強い文明ではなかったため戦闘することなくうまく融合していったのではないかと考えています。

参考資料
Geografia Sacra, Giovanni Feo, Stampa Alternativa, 2006
https://www.tages.eu/2012/04/14/poggio-rota/
https://www.tages.eu/2011/01/27/speciale-poggio-rota/
https://www.tages.eu/2020/02/05/rinaldoniani-di-luca-federici/

素直にうれしいです。ありがとうございます。