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【 大人の見本 】

大学生の時、フォトグラファーのアシスタントのアルバイトをしていた。
いや、言うても多分全然戦力にならなかったと思う。私。汗

アルバイトしていたフォトグラファーの中野さんからも、
「美奈子ちゃん(昔の私の名前)は、
 しりとり歌合戦くらいしかできないからなぁ〜」と
当時、言われていた。。。笑

*長距離移動の車の中で、運転は中野さんご本人。
 そんな中、アシスタントが寝てはいけないので、
 みんなで楽しく起きているように、
 しりとり歌合戦で盛り上げるのが、唯一私が機能する要素だったらしい。。。

私がお世話になった、フォトグラファーの中野正貴さんは、
『TOKYO NOBODY』という不朽のベストセラーを出し、
その後も数々の写真の賞を受賞。
4年前に情熱大陸にも出演。
https://www.mbs.jp/jounetsu/2020/09_27.shtml

私たちがアシスタントをしていた30年前は、
雑誌「ザ・テレビジョン」の表紙を担当していて、
必ず表紙を飾る歌手や俳優さんがレモンを持っていて、
ごく稀に撮影現場に同行して、レモンを手渡しさせてもらったりした。

その中野さんが、品川のキャノンギャラリーSにて
写真展を開催するということで、
当時、一緒にアルバイトをしていた大学の先輩たちと共に
30年ぶりに伺って来た。

https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/nakano-pathos

中野さんは当時、もう既に売れっ子さんだったんだけど、
武蔵美の所蔵品などの記録写真も手がけていて、
私たち学生をアルバイトとして呼んでくれていた。

本来なら中野さん自身が武蔵美の視覚伝達デザイン科出身なので、
視デの学生をアルバイトにしそうなものなんだけど、
どういうわけか、彫刻学科の学生達を歴代アルバイトに呼んでくれていた。
(重たい荷物の上げ下ろしが多いからか、、
 確か中野さんは、彫刻科の学生の上下間含めて、
 連携が取れているからと、言ってくれていたような。。。)

そんなわけで、武蔵美の彫刻学科の学生達が、
沢山中野さんのアルバイトで、お世話になったわけです。

当時、武蔵美の彫刻科の教授陣は、
ある意味、根性論的に、彫刻作品の制作に対してのみ、
熱心に指導してくれていたわけだけど、
おおよそ最終学歴となる大学で、彫刻を学んでも、
ストレートに彫刻家で食っていけるようになる人などおらず、
この先の将来には、漠然とした不安と絶望を抱えながら、
そういう、ちゃんとした社会人にはなれなそうな将来のことを
見ないフリしながら、目の前の制作に打ち込んでいたと思う。

あの頃、中野さんは、武蔵美で培った自分のクリエイティビティを活かして、
真っ直ぐ職業としてフォトグラファーになっていて、
中野さんと過ごさせてもらう時間の中で、私達は、
自分の感性と技術で仕事をしていくプロ意識や立ち振舞いなど、
様々なことを、そばにいて学ばせてもらったと思う。
自分の好きを仕事にする、将来に向けたアドバイスも
移動中の車の中や食事中に沢山してもらった。
(これ今思えば本当に貴重なことだった)

中野さんが今回写真展を開催してくれたおかげで、
私達当時のアルバイトしていた彫刻の先輩達とも
ある意味30年ぶりの再会にもなった。

会場には、中野さんがいて、姿はまだ奥で見えなくとも
聞こえてくる声を聞くだけで、当時に戻るようで懐かしかった。

中野さんは、物撮りだっったとしても、被写体に対して魅力に感じた事を
常に声にしながら、良さを引き出すように撮影していたのが印象に残っている。

『TOKYO NOBODY』の撮影の時もそうだけど、
中野さんの写真は、中野さん自身の何を撮影するかの解像度がめっちゃ高くて、
特に写真の中の建物の細部に渡るまでエッジが効いていて
目に飛び込んでくる風景の鮮明度が、他の人の写真とは明らかに違う。
(生意気な言い方でごめんなさい)

思い出の一つに1997年の夏、中野さんの車で大阪に撮影に向かっていて、
ちょうどアトランタオリンピックの女子マラソンを車の中でラジオで聴いていた。
エチオピアの無名の選手ファツマ・ロバが突如中盤から先頭を走り出した。
アナウンサーは「ロバがすごい勢いで駆け抜けています!」と実況。
でも、ラジオで聴いている私達からすると、映像が見えないだけに、
女子マラソンでロバが駆け巡るって?笑と面白おかしく聴いていた。
そして、サービスエリアで中野さんが、
「ロバがどういう風貌の人物か、想像で描きあって、誰が一番本人に似てるか勝負しよう。」と言い出した。

みんな半信半疑で描いたんだけど、圧倒的に中野さんが見たこともないロバの姿を
克明にそっくり描いたことを今もよく覚えてる。

これもきっと、中野さんのイメージの解像度の高さがあるからだ。

久しぶりの中野さんは、相変わらず
誰よりも気が回っちゃうもんだから、ぼんやりアルバイトだった私達に
この日も優しく甲斐甲斐しく、サインやら何やら尽くしてくれた。
(本当に偉ぶらない凄い人だと思う)

そんな中野さんに接すると、
本当に自分はまだまだずっと子どもだなぁと思う。

これからも中野さんの背中を追いながら、
勉強しまっす!

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