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そして戒めは続く

全ての記憶がない。15時半。何故かアウターを着たまま眠っていたらしい。
身体のあちこちが痛い。事故にでも遭ったのだろうか。何もわからないまま、起床。
携帯を確認して、謝罪。もう何に対して謝罪をしたらいいのかもわからない。謝る理由があまりにも多すぎる。そして色々なものを失いすぎている。
貴重品はしっかり持ち帰っているようだ。後から母に聞くと外に捨ててあったらしい。大事なものなど私には、ない。装着していたリングは無くなっていた。

記憶を巡る旅。
18時、原宿。大都会。多すぎる人々。私は人生で初めてのクラブへ馳せ参じた。一緒に働いている人がDJをするらしい。
慣れない街、慣れない場所。酒が進む進む。慣れないステップ。音楽に合わせて奇妙に揺れているだけだったかもしれないけれど、楽しかった。人生経験。サンパウロ生まれアマゾン育ちの人と仲良くなった。底抜けに優しくて、とてもハッピーな人だった。音の波に呑まれていた。酒が進む進む。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、酔いを引き連れたまま電車でゆらゆらと。まだ音楽が鳴っている気がする。
見慣れた街。見慣れた場所。安心。これから盛大に死ぬとも知らずに、途中で焼き鳥を食べた。

働いてるバーへ。ハイボールはいつ飲んでも美味しい。そう思いながら飲んでいた筈だった。
気がついたら、家。見慣れた天井。見慣れた部屋。おはようございます、じゃない。
何も事態は飲み込めていないが、とりあえず全ては終わったらしい。そう、全てが。

右頬がやけに熱い。熱いのではなく、痛みだと気づくのに暫く時間がかかった。
確認。目の下にでけー擦り傷。なぜ?
鏡を5分くらい見つめていた。見間違いだったらどれだけよかっただろう。
よく見たら眉毛のところにも擦り傷。理解が追いつかなくて涙が出てきた。涙が傷口に染みる。痛い。すごく痛い。でも一番痛むのは心です。バカタレがよ。
アスファルトとご対面したような気がしなくもない。そうでないとこんな傷はできない。
私はどうやって帰ってきたのだろう。思い出せない。思い出せないが、誰かが側にいてくれた気がする。側にいてくれてありがとうございます。土下座してもいいですか?

全身打撲。痛みでしか人は成長できない。
これからはソフトドリンクと共に生きる。できない約束。守らなきゃいけない約束。これからの人生は全て禊です。さようなら人権。さようなら愛のある温かい人々。さようなら、さようなら。

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