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遺書No.751 勝者なき鬼才の怪演。

※この記事は2004年7月6日から2009年7月5までの5年間毎日記録していた「遺書」の1ページを抜粋して転載したものです。

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2006.7.28
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赤といえばシャア。赤い彗星。
かっこよすぎる。俺も赤い彗星と呼ばれたい。
そんな俺はスターにはなれないが俳優にはなれる気がするんだよね。




こんばんわ、みーくんです。




俺が使っているテレビは、
前職の営業会社勤務時代に購入した『24型の液晶TV』なのだが、それまで実は数年間、部屋にTVのない貧乏生活をしていた。

慣れというのは本当に怖いもので、TVのない生活に全く不自由を感じなくなっていたんだよね。

その会社で働くようになって程なく、お金には困らない生活に変わったいたのもあるし、また仕事への影響なども考え、新宿に引っ越した事をきっかけに購入したものだった。


そうだ、TVを購入しよう。(・∀・)



そう、俺は久々に部屋にTVのある、
当たり前の生活空間に戻そうと思ったのだ。

ちなみに、流行といったモノにまるで興味がないうえに、さらにテレビが無いので受動的に入ってくる情報も少ない生活だったしね。

勿論テレビの価格なんかも、一般的に何が主流で一般的にどれくらいが相場かなんてのも知らなかった俺だから、TVを購入する時も至極あっさりとしたものだった。

新宿西口にあるヨドバシに行き、TVコーナーへ入ると、最初に目に留まった液晶TVを見て、即座に「これ、お願いします。」と店員に声をかけた。

流行だの機能だのを一切聞かず。
当時は値引交渉するものだなんて意識も無かったので、かなり勿体ない事に表示価格でだ。

当時まだ売り出されたばかりの液晶TVは、今思えば24型にしてはやはり結構な高値だった訳だが、そんな事は知る由もない。

そんなこんなで俺は数年ぶりに我が家へTVを導入したのだ。

※なお実際には、購入後に店を出てすぐの場所で、TVの入った箱を担ごうとした際に勢い余ってそのままTVにバックドロップをかまし、店から数メートルのとこで完璧に破壊して臨終させたという武勇伝もあるのだが・・・。


・・・まぁそんなこんなで、
今の俺の部屋にあるTVというのはですね、
明日で「購入後ちょうど4周年!」という誕生日を迎える訳なんですよ。

だが最近、自分の目が悪くなってしまった事もあるのだが、大きさに不満があり、近々買い換えようかと思っている。


前置きが長くなったがここからが本題だ。


実は今日、「でかいTV」という新しい家族を迎え入れるべく電器店に行った訳なんですよ。

でもってついでに、冷蔵庫やテレビなどの家電を見て回ったのね。

TVこそ一応の液晶を使ってはいるが、冷蔵庫に至っては高校を出てすぐに一人暮らしを始めた料理のできない男が使うような、本当に小さくて何の機能性も持たないような安っぽい物なのでね。

そう考えると、TVなんかよりもよっぽど先に買い換える必要があるな。。

そう思って冷蔵庫を眺めてたら、本題となる物語の始まりだ。


店に並べられているものは、家族での使用を前提としているような巨大な製品ばかりだった。

テレビも、バイクが買えるような価格のものばかりで、今の一人暮らしにはちょっと過ぎた代物である。

するとそこで。

売り場で腕を組みうーんと唸っていたら、
「何かお探しでしょうか?(*´―`)」
と店員に声をかけられた。

テレビと冷蔵庫を見て回っていた事を伝えると、

「こちらは奥様がとても使いやすい設計になっております」

とか

「大きな画面でお子様にもとても喜ばれますよ」

とか、最初から間違った方向でセールスされた。

俺のどこを見て所帯持ちと判断されたのか、非常に気になるところではある。

・・・だがしかし!

ここは素直に「独り者です」とでも応えるのが、
果たして俺の取るべき正しい行動だとでも言うのか!?


否!


これは挑戦状だ。



やつらは俺に対して、
『販売員』と『購入者』という図式における、
1対1の勝負を挑んできているのだ!

男には引いちゃいけねぇ戦いがある。
by みーくん



ただ説明が面倒だったのもあるが・・・
正直、ネタの匂いがしたから乗ってしまったよね。

すかざす俺は、
所帯持ちという設定で対抗したよね。


自分でも驚いた事に、なんだかその設定を演じる自分に妙にノってきてしまった。

家庭用冷蔵庫の巨大な扉を開き、


「これなら妻の背でも届きそうだな(*´―`) フッ」


とか、
プラズマテレビをなでまわし、


「子供が大きな画面でサッカー見たいって言うので(笑)」


などと、次々飛び出す嘘八百で店員を翻弄。


右に男の子(5)、左に女の子(3)と並んでソファに座り、大きなテレビでサッカーを観戦しつつ、大きな冷蔵庫を開いて献立を考えている美しい妻(26・エプロン装備)に目を細める、幸せな休日の昼下がりを脳内シアターに展開すれば、アカデミー賞級の演技も朝飯前である。



・・・まぁ、
どんなに名演であろうとも必要性までが伴う訳ではないので、結局最終的には、


「あ、残念ですが子供を迎えに行く時間なので、日曜にでも家族でまた来ます」


と実在しない日曜を約束し、
店を出た。





とりあえず俺は、
勝ったと思った。

なんか涙が出た。


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2022.8.2
毎日遺書を書き始めた当時751日目の投稿内容。
あーね、ボクってそういうとこあるよね。


過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。