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[うたの素]『夕星』

「夕星(ゆうつづ)」

私が先にゆくと決めていたくせに
あなたにだけ渡すものを 隠していた

宵の明星が空に灯るたびに
満ち欠けの月が夜に浮かぶたびに

あなたを想っていた
名前を胸で呼んだ
幸せになってほしい
幸せになってほしい
私の知らない人となら
すがたが見えない場所でなら


奇跡の時がちゃんとふたりに降っても
あたりまえを祈りそびれ はぐれたまま

歌の行き先が思い当たりすぎて
誰かのセリフがひとり歩きをして

あなたを重ねていた
架空の物語で
風はなぜ吹くのだろう
風はなぜ吹くのだろう
あなたに逢えない未来へと
言葉が時間に散るように

あなたといる時が、失う前から輝いていた


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