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[うたの素]『アンジュンノウ』

『アンジュンノウ』

見えないものの中にだけ
完全なものがあるという
あなたの声は波のよう
不完全な今日のよう

知らないうたを知るように
ふたりは互いを歌い合い
とぎれるたびに泡立って
わかりきれない海のまま

少しずつ傷ついて 痛みに慣れてしまうのは
少しずつ自分に嘘をついてゆく 暗順応

あなたになってしまいたい
あなたの心で瞳で
あなたの光も闇も知ってなお
あなたを愛しているかが 知りたい


形を持ったものの果て
存在しているサヨナラを
ふれあう指で消し合って
心だけを信じたい

少しずつ確かめて 光に慣れてゆけたなら
少しずつ涙の意味が見えてゆく 明順応

わたしになってしまえばいい
わたしの心で瞳で
勝手な未来を泳ぎきってなお
わたしを愛しているかを 見て来て

どれだけ闇をまさぐっても
どれだけ光を浴びても
ふたりは孤独をいつもてがかりに
出逢って漂うのでしょう 形が あっても なくても


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