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舞台女優が教える!長台詞を覚えるコツ5選

この記事は、以前「はてなブログ」を使っていたときに執筆したもので、のちに加筆修正版を「エントレ」で連載中の「役者コラム」でも掲載して頂いたのですが、個人的にも好きな記事でご好評頂いたので、noteにも残しておきたくて投稿します。

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長台詞を覚えるのは大変!?

早速ですが、こちらの写真をご覧下さい。(文字自体は読みづらいかと思いますが、ご了承下さいませ。)こちらは楽劇座『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』で名物となっている、通称「八の字眉幸子のお取り寄せ」長台詞の一部抜粋です。

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…そう、これでも一部抜粋です。これが何ページも続きます。このお取り寄せ、回を重ねる毎に長〜くなり、今ではほぼ一人で30分近く喋りっぱなしの台詞です(笑)

楽劇座は長台詞が多く、しかも毎月公演をしているため台詞覚えの期間は3-4日である事がほとんど!よく「台詞ってどうやって覚えてるんですか?」とご質問を頂くので、私なりの台詞覚えの方法をご紹介しようと思います。

台詞覚えに正解はないので、あくまでも私のやり方ではありますが、私も全く台詞が覚えられないところからスタートして、今ではきちんと台詞を覚えられるようになりました。

特に「最初はこうしてたけど、今振り返ると失敗だったなぁ…。もっと効率のいい覚え方があったのに!」と感じている事を書かせて頂きますので、まだ台詞覚えのコツがよく分からない方のヒントになれば幸いです。

1/「私には覚えられる!」と信じる

精神論…?と思われるかもしれませんが、とても大切です。台本を貰って、台詞の量が多いと「こんなの覚えられない!」とプチパニックになってしまう方が時々いらっしゃいます。でも、自分で覚えられないと思ってしまったら絶対に覚えられません。

まずはとにかく「私には覚えられる!」と思い込む事が大切。覚える前の、心と頭の準備運動みたいなものだと私は思っています。

2/まずは冷静に台本を読む

よく、台本を貰ったとたんに自分の台詞にマーカーでラインを引く方がいます。もちろん構わないのですが、マーカーを引く前にまずは1度、冷静に台本を読んでみる事をおすすめします。

なぜマーカーを引く前かと言いますと、マーカーを引くと、どうしても自分の台詞を中心に台本を読んでしまうからです。(なので、私は一切自分の台詞に印を付けなくなりました。)

台本というのは、当たり前ですが自分の台詞だけで成り立っている訳ではありません。この当たり前の事が、「自分の台詞を何とか覚えなきゃ!」と焦っていると見えなくなってしまいがち。

★まずは自分の役を忘れて、冷静に脚本を読んで物語の流れや登場人物の関係・役割を理解する。

これ、初心者さんは意外と忘れがちなので、覚えておいて損はないと思います。ここで台本の構造をしっかり掴んでおくと、台詞も覚えやすいですし、演出家からの指示やダメ出しも理解しやすくなってお稽古もスムーズになります。

3/相手の台詞を確認する

いよいよ台詞覚え…といきたいところですが、焦ってはいけません。台本全体が理解出来たら、今度は各シーンや各台詞を理解するためにもう1度読み返します。

その時に私が特に重視してチェックするポイントは、自分の台詞の前後の相手の台詞です。

台詞はただテスト勉強のように暗記しようとすると、なかなか覚えられません!なので私はその台詞を言う時の動作や感情、言い方と連動して覚えます。

その時に大切なのは、「自分の台詞は前の相手の台詞によって引き出され、また後の相手の台詞を引き出している」という事。

例えば「バカ」という台詞があったとして…

【台本A】

女「バカ」

男「お前こそふざけんなよ!」

女「何よ、あんたが悪いんじゃない!」


という台本と

【台本B】

女「バカ」

男「そのバカと付き合ってるのは誰だよ?」

女「…しょうがないじゃん、バカでも好きなんだもん」


という台本では「バカ」の言い方が変わってきますよね。文字にしてしまうと同じ「バカ」ですが、【台本A】では相手を怒らせるような言い方が、【台本B】では愛情を感じさせるような言い方が必要です。

これは単純な例ですが、台本はこんな事がもっと複雑に入り組んで出来ています。相手の台詞が自分の台詞のヒントになっているわけです。なので台詞を暗記する時は、単に文字として「バカ」を覚えるより、感情や相手との関係を理解しながらの方が絶対に覚えやすいです。

4/動きながら覚える!

さて、台本を理解したらいよいよ暗記です。

その時にオススメなのが「とにかく動きながら覚える」事!座りながら暗記しても、いざ動き出すと覚えたはずの台詞を忘れてしまう事…多いんですよね(笑)

動きながら覚えると、いわゆる「体が覚えている」状態になるので、頭で考えなくても台詞が出てきやすくなります。

この事は、語学者として有名で、実は演劇人でもあった関口存男先生も『素人演劇の実際』の中で「演劇の台詞と動きの関係は、音楽で言う歌詞とメロディの関係に似ている。歌詞は忘れてもメロディは忘れないように、台詞は忘れても動きは忘れない。」といった内容の事を書かれています。

これは私も経験があって、舞台で頭が真っ白になっても体が動きを覚えているとポンっと台詞が出てくるんですよね。

初心者さんは「暗記してから動こう…」と座って暗記して、なかなか台本を離せない方も多いかと思いますが、実は台詞と動きをセットにして始めから動いてしまった方が覚えやすいですよ!

5/本番がある

台詞を覚えたいと思っている方の中には、実際に舞台の本番が決まっている方と、本番ではないけれどお稽古や演技レッスンのために台本を覚えるという方がいらっしゃると思います。

本番が決まっている方は、台詞を覚えないと大変な事になってしまうという責任があるので、意外と覚えられます(笑)

やっかいなのは、お稽古やレッスンのために台詞を覚えている方です。一緒にレッスンを受けている仲間が台詞を覚えていなかったり、何よりお客様がいない=責任がないので、どうしても甘えが出てしまいます。

なので、お稽古やレッスンも「本番」という意識を持つ事。それが難しければ、家族や友人に「この日までに覚えるから、見て!」と宣言するのも有りかもしれません。

人間って、やっぱり誰かの目の前で演じる「本番」という期限を設定すると、そこに向けて頑張れるんです。

まとめ

最近、本当によく質問を頂く「台詞の覚え方」について、私なりのコツを書いてみました。

「あんなに長い台詞、どうやって覚えてるんですか!?」とお客様からお伺いされる事もあれば、新人さんから「どうしても台詞が覚えられないんです…」と相談される事も。

演劇をやりたい以上、台詞覚えからは逃げられません(笑)台詞を覚えるのは確かに大変ですが、1度覚えてしまえば自由に演技できるので、お芝居が一気に楽しくなります!

私も、台詞が1行も覚えられなくて泣いて悩んだ事もありました(笑)でも、そんな私でも試行錯誤を重ねて今では長台詞をきちんと暗記出来るようになったので、コツを掴んで頑張れば、絶対覚えられるようになります。

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▼こちらの記事の加筆修正版は演劇動画情報サイト「エントレ」様に掲載されていますので、よろしければそちらもご覧下さい。

http://entre-news.jp/2018/08/53771.html


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