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#27 猫の恩返し

夢を見た。
いつものようにクロに餌をあげる。その場を立ち去り、2.3歩進んだところで振り返ると、クロが人間になっている。小松菜奈のような見た目、LEONのマチルダのようなボブカット、圧倒的な黒髪美少女だ。
そんな彼女から「もう何日も食べてないの、ご飯を一緒に食べたいな」と言われ、レストランに案内する。
食後に「帰る家がないの」と言われたタイミングで起床。
己の強烈な変態性を感じざるを得ない。夢の続きはどうなったんだろう、と想像したい欲求をかき消した。

風の丘ガーデンでの研修27日目が始まった。

今日の仕事はペチュニアの花摘み。
少し目を話した隙に枯れてしまう花弁を摘む作業。
5分おきに切れる集中力。うめき声を上げながら、なんとか作業に耐える。単純作業は想像以上に体力を奪う。12時、疲れ果てた脳みそと肉体を引き摺りながら念願の昼休憩に向かう。ベンチに座ってお弁当を用意すれば、可愛いあいつがやってきた。

クロだ。

体内時計が正確なのか、それとも遠くから私たちの動きを監視しているのか、いずれにせよ休憩のタイミングで必ず姿を現す。そして、甘い鳴き声で餌をねだる。この声を聞く度に己の父性が爆発し、理性が飛ぶ。本当に可愛い。

煮干しが大好物。なぜが尻尾だけ残す。

餌を食べるとご満悦になるのか、手を出すとわざわざ撫でられに来てくれる。お礼に撫でられてやるよと言わんばかりに体を差し出してくれる。野良猫なのに人馴れしすぎてないか。毛並みはサラサラでとても野良とは思えない。可愛い。

ちなみに、クロがここにいるということは巣には赤ちゃんしかいないことになる。赤ちゃんには申し訳ないが、昼休憩に巣を覗きに行くことが毎日の幸せの条件になりつつある。
覗くとそこには天使が4匹。「ミー、ミー」と鳴く姿が愛おしい。生後約3週間、目も開き、随分と大きくなった。

巣の中の子猫たち

餌をあげる代わりに、ふわふわな毛並みを触らせてくれて、天使を拝ませてくれる。猫は恩返しをしてくれると言うけれど、まさにこの事だなと実感する。結局、自分を癒せるのは自分ではなく、可愛い存在…猫なんだなと実感。将来絶対猫を買うことを強く誓った。

仕事が終わり、風の丘ガーデンを後にした。
帰る前に餌をあげる為に巣を覗くとクロの姿はなかった。散歩にでも行ったかな?」と思い、車に乗ってその場を後にする。すると、横目にクロの姿が。やっぱり出歩いてたかと思うと、横にはきなこ色をした茶色いアイツが。二人で戯れあっていた。

おいおい、子供を置いて男とイチャイチャかい。
妬みを拗らせ、もはやクロに怒りが湧いた。猫の恩返しとかほざいてたけど、最後に悲しい気分にさせてくるあたりが抜け目ない。

「そりゃないよクロさん…」

恩返しを喰らう度に増していった黒猫への愛の強さに比例して苦しみも比例した。
カメラを向けると二人で逃げていった。

草陰で逢瀬を交わしていた。

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