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#32 過酷な環境下におけるアーニャの必要性について

今日は土曜日である。
繰り返す、今日は土曜日である。

母の日を1週間前に控えた花農家にに休息の時間は無い。
今日が土曜日だろうが、世間がGWだろうが関係ない。
カーネーションの旬は刻一刻と近づいている。
出荷、出荷、出荷、出荷…。
一年で最も苦しく過酷な三日間、私の上腕二頭筋は日に日に感覚を失い、精神は理性を崩壊させつつある。作業中に奇声をあげたり、変なタイミングで笑ったり、簡単な足し算を連続で間違えたり…。兎にも角にも過酷なのである。

若い男というのは役割がある。それは、全ての肉体労働を一身に担うということだ。今日はカーネーションを約500ケース運んだ。1ケース8個入りなので、約4000鉢。重さは約15キロ程のケースをひたすら運び、胸の高さまで上げる。時には頭の上までも。私の上腕二頭筋は悲鳴を上げ、足は棒のように硬くなっている。もう無理だ、もう嫌だ、風呂に入って寝たい…!
極限まで減少した集中力と精神力をなんとかリカバリーしなければ、私はただの愚物と化してしまう。「これだから今の若者は…」と言われても何も反論できない。世の全ての若者の名誉を守るためにも、なんとか若者である尊厳を保たねば…!
そう考えながら、鬼の出荷作業が終わった後、オーナーの奥さんと喋りながら作業を進めていた。聞けば星野源の大ファンだそう。ならば聞くことはたった1つ。

「SPY×FAMILY 観てますか??」

集英社・ジャンプ+にて絶賛連載中。
アニメは毎週土曜23:00よりテレビ東京他にて放送中。
まさに飛ぶ鳥を撃ち落とす勢いで今、話題になっている作品だ。
見れば必ず結婚したくなるに違いない。故に、私は溢れるばかりの結婚欲の処理の仕方に困っており、可能ならば養護施設で子供引き取りたい。娘ができたら「父」と呼ばせたい。こんな事があったんだよ、って食卓囲みながら話したい。ただひたすらにアーニャが可愛い。ヨルさんはシンプルに今すぐ妻になってくれ。エンディング映像は50回くらい観たと思う。私の心は作品愛で満ち溢れている。

奥さんからの回答はもちろんイエス。私のことをヨルさんと呼びなさいとまで言ってきた。
「似てるのは力が強いとこだけですね!」と回答。
笑ってくれたけど、絶対失言だった。嫌われてないと良いな。

作品について語り合った時間は、ささやかな時間ではあったものの私の疲れを明確な癒した。腕の痛みは取れ、足の痺れも感じなかった。会話が終わってから10分ほどして元の状態に戻ったが、大好きなアニメや漫画の話をするだけでリカバリー効果が現れた事実は、過酷な環境を耐え抜くヒントになり得ると思った。

そこからの私は作業中、ひたすら作品のことを考え続けた。

これが運び終えたらアーニャ。
それを選び終えたらアーニャ。
あれを片付けたらアーニャ。
アーニャ、アーニャ、アーニャ、、、、。

もはや鉢を数える単位が「鉢→アーニャ」に変換される勢いである。
1アーニャ、2アーニャ、3アーニャ…
既に手遅れだろうが、これ以上書くと読者に胸焼けを引き起こす可能性が高いため、これにて割愛。

何が言いたかったのかと言うと、エンターテイメントってそれだけで生きたり、踏ん張る理由になるよねってこと。だから尊いよね、ってこと。それだけである。

きっと23時までは睡魔に耐えきれないだろうから、明日の朝一で観るために、寝る前に5回星野源の「喜劇」を聴こう。明日は出荷がピークを迎えるそうだ。過酷な仕事は耐えるのではない。楽しみを増大させるためのスパイスなのだ!とかそれっぽいことを言っておしまいにする。

ご拝読、ありがとうございました🙇‍♂️



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